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考え込んで黙りこくった大福は、ボフン! と霊体の変化を解いて、自転車サイズがいつものサイズにスケールダウン。
で、
小さな霊体でテチテチヨジヨジ、僕の膝に登ってきたの。
珍しいな……大福が人前で甘えるなんて。
膝の上の大福は、僕のお腹に顔を押し付けフゴフゴ匂いを嗅いでいる。
これは……どういう意味だろう?
やっぱり……会いに逝くのは嫌だって事なのかな……?
僕はとにかく急かしたりしないように、お姫の背中をゆっくりナデナデしてたんだ。
そしたら、僕らの会話を横で聞いてた父さんが、控え目ながらにこう言った。
「大福ちゃんは……迷ってるのかな? 会いに行くのがコワイとか、会いにいったら英海に悪いとか、そういうコトを考えちゃうのかな?」
…………チロリ、
ほんの少し……お姫は後ろを振り向いて、父さんの顔を視た。
「……あのね、まず最初に言っておきたいんだけど、会いたくなければ無理しなくて良いんだよ。大福ちゃんがしたいようにするのが1番だ。どんな選択をしても大福ちゃんはイチニャンじゃない。英海もトウもカアもきなこもいる。淋しい思いはさせないさ。ただ……そうだな、ココからはトウの一人言なんだけど……トウもね、もう若くない。あと数年したら赤いちゃんちゃんこだ。今はそこそこ元気だけども、将来は病気をするかもしれないし、それこそ病気で、大事な大事な猫達の事も英海の事も母さんの事も忘れてしまうかもしれない。絶対に忘れたくないと思ってても……ね」
…………ムク、
大福は上半身だけ僅かに起こすと父さんをジッと視た。
「そう考えると怖くなる。楽しかった思い出も、愛しい気持ちも、ぜんぶ消えてしまったらトウがトウでなくなっちゃうもの。大福ちゃんの話を聞く前から、そういう不安は……年だし、頭のどこかにあったんだ。もしそうなったらどうしよう、どうしたら良いんだろう……って。まぁ、そうなれば自分では何も出来ないんだけどさ。ははは、」
”ははは” と笑った父さんを、大福は淋しそうに視つめる……も、
「そうなっちゃったら申し訳ないけど、動けるのは周りのヒトとネコだけだ。願わくば……みんなを忘れたダメな父を見捨てないでほしい。なにも特別なコトはしなくていいの。ただ……傍にいてほしい。もちろん、毎日じゃなくていいし、忙しければ気持ちだけでも寄り添ってくれたら大満足だ。それにもしみんなの事を忘れても、そのみんなが会いに来てくれたら……また好きになる、大好きになる……絶対にね、」
続く言葉を聞き終えた時、大福は再び考え込んだ。
僕のお腹に顔を押し付け、そうかと思うと僕を視上げ、父さんと母さんの顔も視て、きなことも目を合わす。
……
…………
そしてしばらくそうしていたけど、
大福は____
『うなん』
と一言声を発し、僕の膝から飛び降りたのだ。
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