霊媒師おまけ、雷神号のその後の未来

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霊媒師おまけ、雷神号のその後の未来

『クッソーー! さっきからアッチに行ったりコッチに行ったり! ぜんぜん捕まえらんない! でも負けないからなっ!』 負けない、か。 良い心がけだ。 現場では心が折れたらそこで終わる。 どんなに苦しい場面でも、どんなに敵が強くても、絶対に負けない、絶対に折れない、そう心を強く持つ事が大事だと、昔(あるじ)が教えてくれた。 霊力(ちから)もある、技術もある、そして負けん気の強い人の子は、助走をつけて跳躍すると私に苦内(くない)を投げてきた。 指の間に挟んだ苦内(くない)は片手に3本、計6本が唸りを上げて、急所目掛けて狂いなく飛んでくる。 実に良い腕だ、一流と言っても過言じゃない。 だが詰めが甘い、ここぞという時きまって動きが雑になる。 素早く飛んで苦内(くない)を避けて、ジグザグにダッシュをすれば、彼の動きが一瞬止まる。 彼は私の行く手が掴めずに、だが勘が良いのか、すぐに見極め追って来た。 『待てーーー! とっ捕まえてワシャワシャしてやるーーー!』 ワシャワシャ……、またか。 どうも調子が狂う、この子はどこかおはぎに似ている。 懸命になればなるほど子供っぽいのだ。 そんな事が頭に浮かび、半瞬、笑ってしまったのがまずかった。 気が付けば彼は私のすぐ後ろ。 気配を感じたその直後、 『もらったぁっ!!』 と、飛びかかってきたのだ。 ガシイッ!! ゴロゴロゴロゴロー!! しがみ付かれて大地に転がり、途端、耳も鼻も尻尾も毛皮も、要は全身ワシャワシャされた。 『よく私を捕まえたな、(かける)』 四肢を絡めて私の頭をフゴフゴ嗅いでる17才の、頬をペロリと舐めてやれば、嬉しそうな顔をした。 『すごいだろ! 俺さ、俺さ、やっと雷神号と同じ速さで走れるようになったんだ! 今じゃ隊で1番の俊足だ! 褒めてくれ!』 50メートル、6秒ジャスト。 犬の足なら難もないが、人の足でこの速さは大したものだ。 初めて会った○○年前、(かける)は私に追いつけなかった。 だが毎日こうして、訓練だか遊びだか分からないじゃれあいが、彼の足を鍛えたのだ。 (かける)はゴロンと大地に寝ころび、私の腹を撫でている。 こうしてると、そのうちこの子は寝てしまう。 そうなれば私は毎度、背中に背負って連れ帰るのだが……こういう所もおはぎに似ている。 まったく困ったものだ。 案の定、(かける)がウトウトし始めて、そのまま眠ると思ったのだが……今日は、そうならなかった。 赤髪の隊長がこちらに向かってやってきて、大声を張り上げたからだ。 『ランナー! ガキじゃねぇんだからよ、寝るならちゃんと部屋で寝ろ! 毎回ボルトに運んでもらってんじゃねぇか。ボルト、おまえもランナーを甘やかすな。厳しくいけ、厳しく。まったく、素人はこれだから』 なにを持って素人なのかは分からないし、相も変わらず私の事を ”ボルト” と呼ぶのも分からない。 赤い髪の隊長は清水朋美。 黄泉の国の特殊部隊、その中でも長年エースであり続く、”バッドアップル” の隊長だ。 バッドアップルの隊員は(かける)も含めた27名。 その全員が元悪霊だというのだが、罪を償い禊を済ませ、各星々の悪霊達を滅して回る。 かくいう私もバッドアップルの隊員だ、ただし正式な隊員ではないが。
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