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____しばらくウチに来てくれよ!
____あんたなら即戦力になる!
____本当は正式な隊員に迎えてぇんだがよ、
____それは無理なんだろう?
____あんたのボスは他にいる、
____だから有期限、
____いつかその日がやって来るまで、
____それまで一緒に戦わねぇか?
突然現れた朋美のスカウト。
断る理由は特になかった。
やる事は生きてた頃とほぼ同じ。
現場に出向いて悪い輩を捕まえる、それだけだ。
『うあぁ? ボスじゃん……なんでいるの? 現場が終わって来週までは休みだろ? それとも緊急事態発生?』
半分寝ぼけて翔が聞くと、
『ちげぇよ。今んトコ呼び出しはねぇ。だからランナー、おまえはそのまま休んでろ。アタシはボルトに用があってだな、……ま、ちょうどいい、ランナーにも言っとくか。あのな、ボルトは今日でしばらく隊を離れるからよ』
そう言って、ニヤリと笑って私を視たのだ。
翔は飛び起き、眠気も飛んだ驚き顔で『なんで!? どうして!?』と騒ぎ出す。
そんな翔のすぐ横で、私の胸は早打ちを始めた。
ドクドクドクドク、死して動かぬ心臓が胸の中で暴れ出す。
朋美は多くは語らなかったが、スッと西を指差して、
『ボルト、今すぐ虹の国に行け。おまえが来るのを待ってる男がいる、その男は……って、早っ! ガハハハハー! 転ぶなよー!』
豪快な朋美の笑い声を後方に、私は西へ、虹の国へと駆け出した。
50メートル、6秒ジャスト。
駆けて駆けて駆け続け、天に架かる虹が大きく視えてきた。
さらに走れば前方に、視た事のない初老の男がポツンと広場に立っていた。
彼は私に気がつくと、両手を広げて泣きながら、
『雷神号! 雷神号!』
そう叫び、前のめりに走り出す。
その時、
広場に風がザァっと吹いた。
暖かくて柔らかく、昔、私を撫ぜた大きな手によく似てた。
風は落ち葉と花びらと、
そして、
長い年月1日たりとも忘れなかった、
愛する主の優しい匂いを、
運んでくれた。
第二十二章 霊媒師おまけ、雷神号のその後の未来____了
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