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駅を背中に真っ直ぐ100m。
男の足なら1分で到着するのがウチの会社、【株式会社おくりび】だ。
朝から気温は30度超え、額に汗して扇子でパタパタ扇ぎつつの出勤だ。
「おっはよーございまーす! あー涼しー!」
事務所に入るとエアコンの冷たい空気が心地良い。
ワイシャツだけの背中から、リュックをおろして両手を広げて涼をとる。
こうしていると汗が引くけど、本当だったらお姫をギュッと抱きしめたい。
推定6キロワガママボディは霊体だからヒンヤリだもの。
あの仔がいればエアコンいらず、すぐに涼しくなれるのに。
あー、早く虹の国から帰ってこないかなー。
「おはようございます。今日も暑いですねぇ」
そう言ってニコニコするのはユリちゃんだ。
モスグリーンのブラウスにコットンパンツ、長い髪を後ろでまとめて青いリボンをつけている。
服も髪もシンプルなのに、溢れる若さと透明感で眩しいくらいにキラキラだ。
むぅ……社長めぇ……こんなに可愛いユリちゃんをお嫁さんにするなんて、人生の運、ぜんぶ結婚に使ったな……その代償はおそらく高くつくはずだ。
「おはよう、ユリちゃん。あのさ、朝から突拍子もないコトを聞くようだけど、最近社長、道を歩いてて猫のウンチをよく踏まない?」
この質問にユリちゃんは、笑う事なく真面目な顔でこう言った。
「なんで知ってるんですか!? そうなんです、ココ最近よく踏んじゃうんです!」
やっぱりな、だと思った。
人生はこうやって帳尻を合わせるんだ。
となるとジャッキーさんは猫と犬、その両方を踏むのだろう。
腕を組んでウンウン頷き、僕が1人で納得してると、
『岡村くーん! モーニーン! 先日はお疲れさまでした。初のソロ現場はどうでしたか? 大変でしたか? でもうまくいったみたいですねぇ。顔を視れば分かりますよ』
先代キターーーーーーー!!
「おはようございます! おかげさまで初ソロ無事に終わりました。てか先代もユリちゃんも知ってたんでしょう? あの現場が僕の実家だってコト。詳細は行きの電車で【依頼フォルダ】見てくださいなんて言うもんだから、後から依頼者名と住所見てビックリしちゃいましたよ」
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