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「…………は、はい! 精算ですよね、分かりました!」
ユリちゃんはワンテンポもツーテンポも遅れをとって答えた後に、ササッと僕に近付くと声を潜めてこう聞いた。
「お、岡村さん!(コソコソ)なんで小野坂さんに無視されてるんですか!?(ヒソヒソヒソ)」
「し、知らないよぉ!(コソコソコソ)」
「何か気に障る事をしちゃったとか(コソコソ)、心当たりはないんですか?(ヒソヒソヒソ)」
「ないないない!(コソコソ)だって、そもそも会ってないもん! 最後に会ったのは約2か月前の6月だし(ヒソヒソ)」
「じゃあその6月に何かしちゃった?(コソコソ)」
「えぇ!? そ、そうなのかな、僕、なにかしちゃったのかな? でも覚えてないよぉ(ヒソヒソ)」
ぜんぜん心当たりがない。
会ってない人をどうやって怒らせるのよ。
それともユリちゃんの言う通り、6月にナニかやらかしたのかな。
思い出せ、最後に会った日の事を、あれは確か……そうだ、会社で会ったんだ。
まだ弥生さんが結婚する前。
弥生さん指名で、マジョリカさんからマジョリカさんの口寄せの依頼が入った日の事だ。
僕と弥生さんは3階の研修室にいて、ジャッキーさんのコトであーでもないこーでもないと話をしてたんだ。
で、社長のおつかいで水渦さんが弥生さんを呼びに来たんだけど、顔を合わせた2人は秒で喧嘩を始めたの。
その時、水渦さんがジャッキーさんとマジョリカさんの話を振ってきて、それだけでも炎上なのに更には、
____大倉さんは志村さんが好きなのですよね?
____ですが奥様がいて思うようにならないのでしょう?
____だったら奥様を滅してしまえばいいじゃないですか、
____ただの死者なのだから、
と、人としてあり得ない事を言ってしまったのだ。★
それを聞いた弥生さんは、怒りを通り越し呆れてしまって相手にはしなかったけど、その後僕は水渦さんに色々……そう、説教じみた事を言っちゃったんだ。
もしかして、それを根に持ってるのかな……?
でもな、あの時は怒ってる感じじゃなかったのよね。
話の流れで、水渦さんに好きな人がいると聞いて(ガチびっくりした)、だったら、これからは何かを言う前に、同じ事を水渦さんの好きな人が言われたら……と考えてからコトバにすればきっと喧嘩が減りますよって、水渦さんも「なるほど」なんて答えてくれて、丸く収まったと思ったんだ。
あれ……?
もしかして……実は収まってなかったのかな……? かな?
★弥生と水渦の喧嘩のシーンがココです。
https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=803&preview=1
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