第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

5/74
前へ
/2550ページ
次へ
約この2か月で水渦(みうず)さんと会ったのはあの日だけ。 となると、やっぱりアレが原因か? ど、どうしよう……聞いた方が良いかなぁ。 でもな、もし違ったらあの日の事を蒸し返すみたいで、さらに傷が広がりそう。 だったらいっそ、あの日の事とか関係なくストレートに聞いた方が良いかもしれない。 僕、なにかしましたか? って。 よし、……そうしよう(怖いけど)。 このまま無視されるのは僕も辛いし、まわりにも気を遣わせる。 原因がハッキリすれば、それで僕に非があるのなら、素直に謝るしかないのだ。 僕はリュックからマイボトルを取り出して、淹れてきたジャスミンティーをゴクリと飲んだ。 冷たくておいしい……喉を潤し気持ちを落ち着け、水渦(みうず)さんをチラリと見れば、…………え、何してんの……? 自席に座る水渦(みうず)さんは、なにやら禍々しい空気を出していた。 背筋を伸ばして座っているけど、顔は俯きブツブツ何かを言っている。 耳を澄ませば、 「……大倉……清水……ノロウ……」 とかなんとか、……って、ちょーーー! ホントになにしてんのーーー!? 呪いの儀式ですかーーー!? 「ユ、ユリちゃん!(コソコソ)み、み、水渦(みうず)さん、儀式始めちゃってるけど!(ヒソヒソヒソ)旦那さん、思いっきり呪われてるけど!(コソコソ)」 ビビリまくってユリちゃんにそう言うと、チガウチガウと手を振りながら、 「岡村さん、落ち着いて!(コソコソ)あれは呪いじゃありません(ヒソヒソ)。机の上をよく見てください、箱が置いてあるでしょう?(コソコソ)中身は半紙のヒトガタです。生者避けの結界の為の依り代ですよ。(ヒソヒソ)小野坂さんは出社するたび、ああして負の感情を染み込ませてくれるんです(コソコソ)」 そう教えてくれたんだ。 なるほど、アレが噂の依り代に負の感情をチャージする所だったのか……僕、初めて見たよ……予想以上の禍々しさだ。 ダ、ダメだ……とりあえず今は近寄れない……怖いのもちょっぴりあるけど、あのチャージは会社にとって必要だもの。 現場に出た時、生者避けの依り代が要る場面は多々あるのだ。 だからジャマをしないように、後で聞こうと思ったのに。 おくりびイチの癒しキャラ、であるのと同時、時に空気も何も読みやしない ”無邪気爆弾” をバンバン投下する先代が、チャージ中の水渦(みうず)さんに近付くと、サラツと一発、聞きたかった無視理由を聞く為の爆弾を放り込んだのだ。 『水渦(みうず)ちゃん、なんで岡村君を無視するの? もしかして……照れ隠し?(コソコソ)』 ド直球ーーー! でもって先代、地声が大きいから ”コソコソ” がコソコソになってませんよ、ココまで聞こえてますよ。 てか、なに言ってるの? 照れ隠しってどういう意味? 頭にハテナをポンポン浮かべて、ポカンと2人を眺めていたら、水渦(みうず)さんが突然、 ガタッ!!! 勢いよく椅子から立って、先代と、僕と、ユリちゃんと、みんなの顔を見た後に、そのままダッシュで事務所を出て行ってしまったのだ。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加