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約この2か月で水渦さんと会ったのはあの日だけ。
となると、やっぱりアレが原因か?
ど、どうしよう……聞いた方が良いかなぁ。
でもな、もし違ったらあの日の事を蒸し返すみたいで、さらに傷が広がりそう。
だったらいっそ、あの日の事とか関係なくストレートに聞いた方が良いかもしれない。
僕、なにかしましたか? って。
よし、……そうしよう(怖いけど)。
このまま無視されるのは僕も辛いし、まわりにも気を遣わせる。
原因がハッキリすれば、それで僕に非があるのなら、素直に謝るしかないのだ。
僕はリュックからマイボトルを取り出して、淹れてきたジャスミンティーをゴクリと飲んだ。
冷たくておいしい……喉を潤し気持ちを落ち着け、水渦さんをチラリと見れば、…………え、何してんの……?
自席に座る水渦さんは、なにやら禍々しい空気を出していた。
背筋を伸ばして座っているけど、顔は俯きブツブツ何かを言っている。
耳を澄ませば、
「……大倉……清水……ノロウ……」
とかなんとか、……って、ちょーーー!
ホントになにしてんのーーー!?
呪いの儀式ですかーーー!?
「ユ、ユリちゃん!(コソコソ)み、み、水渦さん、儀式始めちゃってるけど!(ヒソヒソヒソ)旦那さん、思いっきり呪われてるけど!(コソコソ)」
ビビリまくってユリちゃんにそう言うと、チガウチガウと手を振りながら、
「岡村さん、落ち着いて!(コソコソ)あれは呪いじゃありません(ヒソヒソ)。机の上をよく見てください、箱が置いてあるでしょう?(コソコソ)中身は半紙のヒトガタです。生者避けの結界の為の依り代ですよ。(ヒソヒソ)小野坂さんは出社するたび、ああして負の感情を染み込ませてくれるんです(コソコソ)」
そう教えてくれたんだ。
なるほど、アレが噂の依り代に負の感情をチャージする所だったのか……僕、初めて見たよ……予想以上の禍々しさだ。
ダ、ダメだ……とりあえず今は近寄れない……怖いのもちょっぴりあるけど、あのチャージは会社にとって必要だもの。
現場に出た時、生者避けの依り代が要る場面は多々あるのだ。
だからジャマをしないように、後で聞こうと思ったのに。
おくりびイチの癒しキャラ、であるのと同時、時に空気も何も読みやしない ”無邪気爆弾” をバンバン投下する先代が、チャージ中の水渦さんに近付くと、サラツと一発、聞きたかった無視理由を聞く為の爆弾を放り込んだのだ。
『水渦ちゃん、なんで岡村君を無視するの? もしかして……照れ隠し?(コソコソ)』
ド直球ーーー!
でもって先代、地声が大きいから ”コソコソ” がコソコソになってませんよ、ココまで聞こえてますよ。
てか、なに言ってるの?
照れ隠しってどういう意味?
頭にハテナをポンポン浮かべて、ポカンと2人を眺めていたら、水渦さんが突然、
ガタッ!!!
勢いよく椅子から立って、先代と、僕と、ユリちゃんと、みんなの顔を見た後に、そのままダッシュで事務所を出て行ってしまったのだ。
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