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俄然やる気になっちゃって、さっそく聞くぞと立ち上がる……も、
「小野坂さん、お待たせしました。精算が終わったのでお金をお渡しします」
仕事の早いユリちゃんに先を越されてしまった。
お金を受け取り財布にしまった水渦さんは、自席のパソコンを終了させると同時、社用タブレットを手に持った。
慣れた様子で画面を数分読み込んで、それもすぐにカバンにしまう。
そして壁にかかる車のキーを取りながら、
「それでは先代、ユリさん、次の現場に行ってきます」
シュタッと手を上げ歩き出す。
早っ!
もう行くの!?
現場の内容確認だとか、ちょっと1杯お茶を飲むとか、そういうの一切無しで!?
ストイックにも程があると思いつつ、そしてやっぱり僕は無視かと落胆しつつ、出かける背中を見つめていると、先代が水渦さんを呼び止めた。
『ちょっと待って。今回水渦ちゃんが行く現場、確か難易度も危険度も高めでしたよねぇ』
朝の光を窓から受けて、先代はいつになく爽やかにそう言った。
それに対して水渦さんは、
「そのようです。それが何か?」
静かに答えて振り向いた。
そしてこの後先代は、本日2発目。
1発目よりも更に威力がマシマシの、強烈な ”無邪気爆弾” を投下したのだ。
それが……
『水渦ちゃん。今回の現場ですが、岡村君とツーマンセルでお願いします』
これだ!
えぇ!?
水渦さんと一緒の現場!?
僕、ガン無視されてるのに!?
やややややや、ダメでしょ、ムリでしょ、だって現場はチームワークが大事でしょ、今の感じでうまくいくとは思えませんが!
口にこそ出さなかったが、たぶん気持ちが顔に出たのか、水渦さんはギロリを僕をひと睨み(でも目は合わせない)。
この発言が社長なら、きっと今頃霊矢が飛んでる。
だが相手は先代なのだ(水渦さんは先代とジャッキーさんには懐いてる)。
故に霊矢は飛ばさずに、だけど露骨に嫌な顔しながら拒否をした。
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