第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

8/74
前へ
/2550ページ
次へ
俄然やる気になっちゃって、さっそく聞くぞと立ち上がる……も、 「小野坂さん、お待たせしました。精算が終わったのでお金をお渡しします」 仕事の早いユリちゃんに先を越されてしまった。 お金を受け取り財布にしまった水渦(みうず)さんは、自席のパソコンを終了させると同時、社用タブレットを手に持った。 慣れた様子で画面を数分読み込んで、それもすぐにカバンにしまう。 そして壁にかかる車のキーを取りながら、 「それでは先代、ユリさん、次の現場に行ってきます」 シュタッと手を上げ歩き出す。 早っ! もう行くの!? 現場の内容確認だとか、ちょっと1杯お茶を飲むとか、そういうの一切無しで!? ストイックにも程があると思いつつ、そしてやっぱり僕は無視かと落胆しつつ、出かける背中を見つめていると、先代が水渦(みうず)さんを呼び止めた。 『ちょっと待って。今回水渦(みうず)ちゃんが行く現場、確か難易度も危険度も高めでしたよねぇ』 朝の光を窓から受けて、先代はいつになく爽やかにそう言った。 それに対して水渦(みうず)さんは、 「そのようです。それが何か?」 静かに答えて振り向いた。 そしてこの後先代は、本日2発目。 1発目よりも更に威力がマシマシの、強烈な ”無邪気爆弾” を投下したのだ。 それが…… 『水渦(みうず)ちゃん。今回の現場ですが、岡村君とツーマンセルでお願いします』 これだ! えぇ!? 水渦(みうず)さんと一緒の現場!? 僕、ガン無視されてるのに!? やややややや、ダメでしょ、ムリでしょ、だって現場はチームワークが大事でしょ、今の感じでうまくいくとは思えませんが! 口にこそ出さなかったが、たぶん気持ちが顔に出たのか、水渦(みうず)さんはギロリを僕をひと睨み(でも目は合わせない)。 この発言が社長なら、きっと今頃霊矢が飛んでる。 だが相手は先代なのだ(水渦(みうず)さんは先代とジャッキーさんには懐いてる)。 故に霊矢は飛ばさずに、だけど露骨に嫌な顔しながら拒否をした。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加