第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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「申し訳ありませんが拒否させて頂きます。先代の仰る通り、これから行く現場は難所ですが私1人で充分対応可能です。岡村さんに来られても足手まといにしかなりません。はっきり言って迷惑です」 相変わらず辛辣だ。 ここまで言われると怒る気にもならない、……だけどやっぱり無理だな。 こんなに僕を嫌がってるのに、うまくいきっこないよ。 さすがの先代も退くだろうと、そう思っていた。 今は繁忙期、無理にツーマンセルを組ませなくても他にも現場はたくさんあるのだ。 だが先代は退かなかった。 いつもみたいにニコニコ笑ってこう言ったのだ。 『いいえ、今回はツーマンセルでお願いします。この現場、私も資料を読みましたが厄介ですよ。確かに水渦(みうず)ちゃんはスキルが高い。ですが身体は1つしかありません。何体もいるようですし、援護が必要です』 「でしたらパートナーは志村さんにしてください。いくら ”期待の新人” でも岡村さんのスキルでは援護になりませんので」 『援護にならない、ですか。ほっほっほっ! 水渦(みうず)ちゃんは知らないのですねぇ。彼はもう新人ではありませんよ。立派な霊媒師だ。この短期間にスキルも相当上がってます。足手まといにはなりません。水渦(みうず)ちゃん、ココはひとつ私を信じてください』 ニコーーーーッ! 眩い光に包まれたキュートな笑顔に視つめられ、水渦(みうず)さんはたっぷり数分沈黙した……が、 「………………はぁ、分かりました。先代がそこまで仰るなら連れていきます。最後に確認ですが、岡村さんはスキルが上がったのですよね? でしたら如何なる事になったとしても、私は一切岡村さんを助けません。それでよければ」 苦虫を嚙み潰したような、そんな顔を僕に向けた水渦(みうず)さん。 この日初めて目が合った。 はぁ……こんな調子で不安しかないや。 だけどきっと、先代にはなにか考えがあるのだろうと、僕を置いてさっさと出ていく先輩の、その後を追いかけたのだ。
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