第六章 霊媒師OJT-2

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バシィ!!! 痛った!! 誰かに思いっきり肩を叩かれた。 視なくてもわかる。 いきなり叩いてくるようなダメ大人といったら、お父さんか社長しかいない。 今回はどっちだ? 『おい、岡村コノヤロー!』 正解はお父さんでした。 『岡村ぁ! まぁ、なんだ、貴子が世話になったな』 だいぶ目が慣れて、視えるようになった目の前にはふんぞり返ったお父さんがいた。 「いえ、僕なんてなにも……」 『いや、貴子と婆さんから聞いた。貴子、おまえに助けてもらったんだってな。そこんとこは礼を言わせてもらう』 あろう事か、お父さんが僕に頭を下げた。 「そんな! やめてください! 僕の力なんて微々たるものでして! なんかすみません!」 僕はしどろもどろで、とりあえず謝ってみる。 『岡村よ、さっき誠にも言ったんだがな、この先、俺らが向こうに逝っちまったらユリはまた独りぼっちになっちまう。明るく振舞ってるけど、あれはまだ18才の小娘だ。本当は不安で淋しくて辛いはずだ。けど向こうに逝く俺らに心配かけまいと頑張って笑ってるんだ。あの子は優しい子だ。けど、その優しさに付け込む下衆だっているだろう。アパートに一人暮らしってのも心配だ。なぁ、頼む、岡村よ。ユリを守ってやっちゃくれねぇか?』 「お父さん……」 『岡村には岡村の生活がある。だから無理にとは言えねぇ。だけどよ、俺達家族にとってユリは宝であり希望なんだ。アイツが幸せになる為なら俺は人だって殺せる。だけど俺は死んじまって、今の俺じゃあユリを守る事ができねぇ。だけどな必ずなんとかする。 だからせめてそれまで守ってやってくれねぇか? 頼む! この通りだ!』 言い終わるや否や、お父さんは地に這い土下座した。 僕は反射的に座り込み、頑として頭を上げないお父さんの背をさすり、 「わかりました! わかりましたから顔を上げてください! 僕と社長と先代でユリちゃんを守ります、約束します! だから安心してください!」 『本当か?』 「本当です」 『誓うか?』 「誓います」 『ユリになにかあったらチェーンソーだぞ?』 「え……? チェーンソー?」 『そうだ』 「だ、だいじょうぶです」 『そうか、ありがとう。無理言ってすまんな。……岡村さん、ユリの事、どうかよろしくお願いします』 そう言ってお父さんはは僕に深々と頭を下げた。
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