第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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うわ……これは中々ハードな内容だな……どういう理由か知らないが、別荘には何体もの悪霊達がいて、そいつらは悪意を持って篠原様に害を成す。 その内容も気になるよ。 ”キッチンの食器が割れて散乱していた……” とあったけど、基本的に幽霊は、現世の物質に干渉出来ないはずなんだ。 特殊な霊力(ちから)でも無い限り、さわりたくてもすり抜けてしまうから。 だが、これは大福が言ってた事だけど、干渉が絶対に不可能と言う訳ではない。 特殊な霊力(ちから)が無い場合でも、激しい怒り、憎しみ、悲しみ、そういった感情の昂り等で自分の霊体(からだ)の電気を削って手などに溜めて、その手で一気に、叩くように物質に触れば干渉が可能になるというのだ(とはいえ全部の幽霊がそれを出来るとは限らないが)。 ただし、この方法はリスクがあって、何度もそれを繰り返せば霊体(からだ)に負担がかかってしまう。 そりゃそうだ、霊の霊体(からだ)はいわば電気の集合体。 その電気を過度に消費し続けたなら、いつかは無になり消滅する。 それを知ってか知らずか……食器もそう、就寝中の篠原様の首をしめたのもそう、そしてもちろんポ現もだけど、別荘の悪霊達はその方法で物質に干渉しているのだろう。 依頼内容を読み終えた僕は、タブレットをカバンにしまって前を見た。 少し前に一般道から高速道路に乗り換えて、早い速度で車は進む。 車内は変わらず沈黙のままだった。 ハンドルを握る水渦(みうず)さんは一言も発さない。 音楽もラジオもついていないから、静けさだけが気になって空気がやけに重苦しい。 このままじゃあダメだよな。 前に弥生さんが言ってたよ。 現場で誰かと組む時は、普段のコミュニケーションがモノを言う。 お互いの性格が分かっていれば、現場で相手がどう動くのか予測がつきやすい。 この人ならこういう時こう動く、だから自分はこう動く、そうやって上手く連携するのが大事なのだと。 そしてこうも言ってた。 ____だからアタシはクソ水渦(みうず)とは絶っっっ対に組まない!! と。 はぁ……弥生さん、僕は今日、アナタが組むのをNG出してる水渦(みうず)さんとツーマンセルなんですよ。 基本僕は誰と組んでもOKだけど、水渦(みうず)さんが僕と組むのが嫌みたいで拒絶されまくってます。 前途多難だなぁ……とは言え本当になんとかしないと、このままじゃあ、現場で水渦(みうず)さんがどう動くのか、1ミリも予測がつかないや。
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