2366人が本棚に入れています
本棚に追加
よし……篠原様のお宅に着くまでが勝負だ。
ココはひとつ、歩み寄ってみるか。
そう思ってチラリと見れば、その横顔は不機嫌全開。
話しかけるのを躊躇してしまう。
いきなりじゃダメだ(僕のメンタル的に)、徐々に徐々に段階を踏むんだ。
そう、リハビリ的な感じでさ。
まずはこの沈黙をなんとかしたい……音楽でもつけてみるか。
「……水渦さん、音楽かけても良いですかね?」
一応聞いてみる……も、返事はない(だと思ったけど)。
なもんで勝手にスィッチオン。
備え付けのカーオーディオには、前回車を使った人がなんらかのCDを入れっぱなしにしているコトが多い。
なもんでスィッチさえ入れれば曲が流れるはずなんだ。
曲は始まった。
ハードなイントロ、ハイテンポな曲調だが聞いた事がない。
ま、知らない曲でも沈黙よりはいいだろうとそのままにしていると、イントロが終わったらしく歌声が聞こえてくるかと思いきや、歌詞の代わりに激しいトンツー音が始まった。
えっと……ナニコレ。
もしかして、モールス信号?
え? 歌わないの? 代わりにトンツートンツーやってるだけ?
え? え? え? ……あ、あーーー!
この車! 前回乗ったのジャッキーさんだろ!
運転は別だろうけど、おそらく社長か嵐さんとツーマンセルを組んだんだ。
でもってこの曲はジャッキーさんが大好きな深夜アニメの主題歌!★
確かタイトルは……
【戦国時代にタイムスリップゥ?赤点コレクター★レキナのもっと歴史の勉強しとけば良かった!丸腰女子高生、秒単位でライフがピンチ!戦火の中であばばばば!!】
とかなんとか、やたらと長いヤツゥ!
初めて聞いた! ホントにトンツーしかしてないや!
や、どうしよ、沈黙よりはマシだけど、曲にトンツー、これがなんとも落ち着かない。
プチ、
停止ボタンを押してみた。
だ、だめだ。
これ、ジャッキーさんと聞くんなら盛り上がると思うんだ。
だけどこの空気の中で聞くのはツライ。
★深夜アニメの主題歌がトンツーであると、そんな話をしているシーンがココです。
https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=570&preview=1
最初のコメントを投稿しよう!