第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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◆ 途中で僕らはスーパーに寄り、パンや飲み物お菓子など、たくさんの食料を買い込んだ。 その理由は入る現場が完結するまで、どのくらいの時間……いや、日数がかかるか分からないからだ。 霊力者は霊力(ちから)を使うと、その分だけカロリーを消費する。 途中で何かを食べないと、とてもじゃないけど身体が持たない。 後部座席には食料がたっぷり詰まった袋が置かれ、車の揺れでたまにカサカサ音がする。 水渦(みうず)さんは前を見たまま運転中で車内は再び沈黙だ。 僕はこの静けさの中、やはり真っすぐ前を見て、仕事とは関係ない……そう、別の事を考えていた。 スーパーではロクに話をしなかった。 今だって話さないし、空気はずっと微妙なままだ。 水渦(みうず)さんが何を考えているのか分からない、……ん、ぜんぜん分からない。 最初……僕は少し自惚れたんだ。 篠原様のお宅に行く前、車の中で僕と水渦(みうず)さんは言い合ってさ。 ____貴方、私が何を言っても受け止めると言いましたよね、 ____本当に大丈夫ですか、本当に受け止められますか? ____私が内に抱えてるもの、貴方に対して抱えてるもの、 ____それは爆弾かもしれません、 ____聞いてしまえば爆発します、 ____それでも知りたいですか?  ____それでも気持ちを受け止めて……………… あの時の水渦(みうず)さん、様子がおかしかった。 唇を震わせて、挑む目をして一方的に喋ってさ。 いつもなら選ぶ言葉はキツイけど、理路整然と話をするし、こちらの話もちゃんと聞く。 ごくたまに、何かの拍子にキレてしまうと口汚く怒鳴るけど、そういう時はさっきみたいに一方的に喋るんだ。 さっきの水渦(みうず)さん……口汚くはなかった、でもキレた時と同じように捲し立てたんだ。 目が真っ赤だった。 声も少し震えてた。 あんな水渦(みうず)さんを初めて見た。
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