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その時、先代が朝に僕に言った事、ああ……それだけじゃない、先代が前にウチに泊まりに来た時、あの夜の濁した言葉も思いだし、それで、それで、もしかしたらと…………思ったんだ。★1
そしてあと1つ、僕のおこがましい自惚れを裏付けるように。
喋り終えた水渦さんが黙って少し経った後……彼女から ”甘い匂い” が漂ったんだ。
どういう訳か、初めて会った時からそうだった。
彼女に限り、感情の変化が匂いで分かる。★2
キレてる時は "腐敗臭"、嬉しい時は ”ジャスミンの香り”……と、水渦さんの感情が、匂いとなって漂ってくる。
他に匂いのする人はいない。
先代も社長も、弥生さんもジャッキーさんも……大福さえもしないのに、水渦さんだけはする。
その水渦さんから、酔いそうなほど甘い香りが漂ったんだんだ。
だから僕はてっきり………………だけど、あれからすぐに、
____今回岡村さんに如何なる事があったとしても、
____私は一切助けません、
____スキルが上がったのなら自己完結でお願いします、
____もちろん私の事も助けて頂かなくて結構です、
こう、斬り捨てられた。
僕の自惚れが自惚れでないとしたら、あんな酷い事は言わないよ。
好きとか嫌いとか、それ以前の問題だ。
仕事なのに、協力し合わなくちゃいけないのに、彼女はそれを拒絶する。
一体なんの為のツーマンセルだろう。
現場で2人、それぞれ勝手に動けと言うのか。
……
…………
………………
心の中に靄を溜め、助手席から窓の外を眺めていた。
車の速度は外の景色を後ろに流し、その景色から信号や人の家、そういうものが徐々に減り出し、いつしか車は林の中をひた走る。
舗装が雑でガタガタ車体が揺れ出して、さらに奥へと進んでいくと、それは突然現れたんだ。
竹を連ねた和の外構。
グルリと囲う広い敷地の真ん中に、大きな平屋の日本家屋が建っている。
お屋敷と呼ぶにふさわしい……篠原様の別荘だった。
★1 先代がエイミーの家にお泊りした夜、意味ありげなコトを言ってたのがココです。
https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=941&preview=1
★2 水渦の感情を初めて匂いで感じ取ったシーンがココです。
https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=406&preview=1
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