第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

23/74
前へ
/2550ページ
次へ
その時、先代が朝に僕に言った事、ああ……それだけじゃない、先代が前にウチに泊まりに来た時、あの夜の濁した言葉も思いだし、それで、それで、もしかしたらと…………思ったんだ。★1 そしてあと1つ、僕のおこがましい自惚れを裏付けるように。 喋り終えた水渦(みうず)さんが黙って少し経った後……彼女から ”甘い匂い” が漂ったんだ。 どういう訳か、初めて会った時からそうだった。 彼女に限り、感情の変化が匂いで分かる。★2 キレてる時は "腐敗臭"、嬉しい時は ”ジャスミンの香り”……と、水渦(みうず)さんの感情が、匂いとなって漂ってくる。 他に匂いのする人はいない。 先代も社長も、弥生さんもジャッキーさんも……大福さえもしないのに、水渦(みうず)さんだけはする。 その水渦(みうず)さんから、酔いそうなほど甘い香りが漂ったんだんだ。 だから僕はてっきり………………だけど、あれからすぐに、 ____今回岡村さんに如何なる事があったとしても、 ____私は一切助けません、 ____スキルが上がったのなら自己完結でお願いします、 ____もちろん私の事も助けて頂かなくて結構です、 こう、斬り捨てられた。 僕の自惚れが自惚れでないとしたら、あんな酷い事は言わないよ。 好きとか嫌いとか、それ以前の問題だ。 仕事なのに、協力し合わなくちゃいけないのに、彼女はそれを拒絶する。 一体なんの為のツーマンセルだろう。 現場で2人、それぞれ勝手に動けと言うのか。 …… ………… ……………… 心の中に靄を溜め、助手席から窓の外を眺めていた。 車の速度は外の景色を後ろに流し、その景色から信号や人の家、そういうものが徐々に減り出し、いつしか車は林の中をひた走る。 舗装が雑でガタガタ車体が揺れ出して、さらに奥へと進んでいくと、それは突然現れたんだ。 竹を連ねた和の外構。 グルリと囲う広い敷地の真ん中に、大きな平屋の日本家屋が建っている。 お屋敷と呼ぶにふさわしい……篠原様の別荘だった。 ★1 先代がエイミーの家にお泊りした夜、意味ありげなコトを言ってたのがココです。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=941&preview=1 ★2 水渦(みうず)の感情を初めて匂いで感じ取ったシーンがココです。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=406&preview=1
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加