第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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水渦(みうず)さんは、打って変わって不機嫌そうな顔をした。 話の腰を折られてしまって、あからさまに不満な空気をまき散らす。 だけど、怯んでなんかいられない。 「水渦(みうず)さん、…………なにが気に入らないんですか?」 鼻から深く息を吸った、気持ちを落ち着かせる為だ。 喧嘩をしたい訳じゃない、責め立てたい訳でもない。 ただ、理由が知りたかった。 それに対して水渦(みうず)さんは、眉間に軽くシワを寄せ、つまらなそうに淡々とこう言った。 「何が気に入らない、ですか。何を今更。前にも言いました。すべてです。私自身もこの世の中も、現世も黄泉も生者も死者も、不安ながらに幸せそうな篠原様も。それから岡村さん、貴方もです」 ああ……そうだ。 確かに前にも言っていた。 だけど、だけどさ、僕から見た水渦(みうず)さんは、そう言いながら、少しずつ変わってきたと思ってたんだ。 キレなければ話をちゃんと聞いてくれるし、キレる事も少なくなった。 そりゃあ気難しい所はある。 でも、先代やジャッキーさんと話す時には、優しい顔をするじゃない。 それに……僕と話す時だって、優しい顔をしてくれた。 それなのに……この2か月でリセットされてしまったのか。 少なくとも、僕に対して変わってしまった。 その理由も分からない、分かりかけた気がしただけで、とんだ思い違いだった。 水渦(みうず)さんは僕の事が大嫌いなんだと思う。 酷い言葉の数々も、半分は本心でも、もう半分は僕に対する当てつけだ。 そう、思わずにはいられない。 このままツーマンセルで、うまくいくのかな。 強行して良いものか……と、心が折れかけた時だった。 ふと、目線を上げて、……そう、水渦(みうず)さんから目を逸らして、代わり、別荘の、大きな窓を見て、違和感を感じたんだ。 なに……? なにかが動いた……? 目を凝らしもう一度、窓を視ると…… そこにはガラスに両手をつけて、言い合う僕らをジッと視る……男性の姿が視てとれた。
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