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水渦さんは、打って変わって不機嫌そうな顔をした。
話の腰を折られてしまって、あからさまに不満な空気をまき散らす。
だけど、怯んでなんかいられない。
「水渦さん、…………なにが気に入らないんですか?」
鼻から深く息を吸った、気持ちを落ち着かせる為だ。
喧嘩をしたい訳じゃない、責め立てたい訳でもない。
ただ、理由が知りたかった。
それに対して水渦さんは、眉間に軽くシワを寄せ、つまらなそうに淡々とこう言った。
「何が気に入らない、ですか。何を今更。前にも言いました。すべてです。私自身もこの世の中も、現世も黄泉も生者も死者も、不安ながらに幸せそうな篠原様も。それから岡村さん、貴方もです」
ああ……そうだ。
確かに前にも言っていた。
だけど、だけどさ、僕から見た水渦さんは、そう言いながら、少しずつ変わってきたと思ってたんだ。
キレなければ話をちゃんと聞いてくれるし、キレる事も少なくなった。
そりゃあ気難しい所はある。
でも、先代やジャッキーさんと話す時には、優しい顔をするじゃない。
それに……僕と話す時だって、優しい顔をしてくれた。
それなのに……この2か月でリセットされてしまったのか。
少なくとも、僕に対して変わってしまった。
その理由も分からない、分かりかけた気がしただけで、とんだ思い違いだった。
水渦さんは僕の事が大嫌いなんだと思う。
酷い言葉の数々も、半分は本心でも、もう半分は僕に対する当てつけだ。
そう、思わずにはいられない。
このままツーマンセルで、うまくいくのかな。
強行して良いものか……と、心が折れかけた時だった。
ふと、目線を上げて、……そう、水渦さんから目を逸らして、代わり、別荘の、大きな窓を見て、違和感を感じたんだ。
なに……?
なにかが動いた……?
目を凝らしもう一度、窓を視ると……
そこにはガラスに両手をつけて、言い合う僕らをジッと視る……男性の姿が視てとれた。
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