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さっきのは冗談と思えない言い方だった。
本気でわざと失敗するつもりなのか?
その為に、別行動を望むのか?
「はぁぁぁぁぁ………………」
僕が投げた問いかけに、水渦さんは露骨に嫌な顔をした。
ため息はすこぶる長くて聞いてるだけで気が滅入る。
ストレスが蓄積されて頭の芯が締め付けられる。
能面顔に非難の色を厚くのせ、僕を見上げる水渦さんは吐き出すようにこう言った。
「岡村さん、いい加減にしてください。はぁぁ……貴方と話していると消耗します」
な……!
”消耗します” って……それ、アナタが言う?
僕だっておんなじだ、消耗してる、ストレスめっちゃ溜まってる。
あんまりな言い分に言葉がすぐに出なかった。
口をパクパク、僕が動揺していると、水渦さんは更に続けて言ったんだ。
「わざと仕事を失敗させる、そんな事をするはずがないじゃないですか。良い事なんてありません。スキルが低いとみなされて社内評価に響きます。そうなれば当然給料が下がります。少し考えれば分かる事ですよ。はぁぁ……冗談も通じませんか?」
ちょ、なにそれ……!
自分で言うのもアレだけど柔軟性はあるつもり、冗談は通じる方です。
ただ、言い方。
さっきの水渦さん、目がガチだったし冗談に聞こえなかった。
クソ……!
言われっぱなしでなんだか悔しい……!
言ったる、言い返したる!
そう思うのに、それより先に水渦さんの話の続きが始まった。
「それだけじゃありません。失敗すれば現場から撤退させられ、私の代わりに別の霊媒師が入る事になる、……そう、大倉さんが入る可能性もあるんですよ。そんな事……とてもじゃないけど耐えられません(ギリッ……!)。あの方だけには絶対に借りを作りたくないですから」
うわ……相変わらずの仲悪さんだ。
でもまぁ……こうやって聞いてみると、わざと失敗はなさそうだ。
はぁ……ため息つきたいのはコッチだよ。
冗談が冗談に聞こえないから、分かりにくいったらありゃしない。
ん……?
という事はもしかして、僕と別行動って言ったのも冗談だったりする?
めちゃくちゃ嫌そうに見えたけど、すっごい突き放されたけど、可能性はある、……なのでそれを聞いてみた。
「水渦さんの冗談は上級者向けで難易度高です。じゃあもしかして、”現場で僕らは別行動” これも冗談ですかね? だとすればムキになっちゃってすみません。僕はてっきり、」
“勘違いをしてたみたい” と言いかけたけど、
「違います、それは本気です」
能面顔の水渦さんに、バッサリと斬り捨てられた。
その一言を聞いた時、
………………プチッ、
僕の中でなにかが切れた。
で、
自分でも信じられない。
頭で考えたんじゃない、身体が勝手に動いてしまった。
僕は無言で水渦さんの手を取って、握ったままで歩き出す。
”手を繋いでいいですか?” なんて許可なんかとってない。
完全無許可。
水渦さんは隣でなにやら騒いでいるけど、もう知らない。
この現場、ツーマンセルで行きますから。
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