第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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竹を連ねた和の外構。 グルリと囲う広い敷地の真ん中に、大きな平屋の日本家屋が建っている。 今は外から眺めてる、この後は鍵を使って建物内に入るんだ。 篠原様に害を成す、悪霊達を滅する為に。 んで、 無許可で手繋ぎ、……いや、猛獣捕獲か? 僕はこの、わからず屋で皮肉屋で、冗談が高度過ぎて(・・・・・)一般人には理解不能な困り者、水渦(みうず)さんの肉厚ハンドを離すコト無く前進中だ(門柱から玄関まで距離がある)。 「岡村さん! 離してください!」 水渦(みうず)さんは僕に引かれて小走りしながら、声を大に抗議する____が、 「拒否します。離しません」 今度は僕がにべもなく斬り捨てた。 斬り捨てられた水渦(みうず)さんは、いつになく動揺してて返す怒声にいつものキレが見られない。 「は、はぁぁぁ!? な、何を言ってるんですか!? いいから早く離してください! セクハラで訴えますよ!」 「どうぞどうぞ、お好きなように。代わりに僕はパワハラで訴えますから」 ぐぬぅ……っ! 歯軋りの音がココまで聞こえてきそうなくらい。 水渦(みうず)さんは苦虫をゴリゴリ咀嚼し大いに顔を歪めてる。 その後もわーわー色々言われたけども、基本無視で玄関前まで辿り着く。 パンツのポッケに手を突っ込んで、篠原様から預かった別荘の鍵を取り出した。 「じゃあ開けますよ。中に入ったら、まずは気配を探りましょう。それで(だれ)も来ないようなら、外から視た1階の部屋に突入します。窓際に異形の(もの)がいたからね、」 いよいよだ。 鍵穴に鍵を差し込み、打ち合わせとは到底言えない、雑な流れを口にした。 聞いてるのか聞いてないのか、よく分からない水渦(みうず)さんは、眉間にシワをめり込ませ、眉をハの字に僕の顔をジッと見る、そして、 「…………本当にもう離してください。中に入ったら別行動と言ったじゃないですか。これじゃあ好きに動けません」 あら珍しい。 水渦(みうず)さんが困ってる。 ま、無理もないか。 嫌いな僕に無理矢理手を繋がれて、メンタルガシガシ削られてるんだ。 ココロの中では ”岡村キメェ!” に始まって、罵詈雑言が溢れてるに決まってる(いつ表に出てもおかしくない)。 でもね、僕は怒ってるんだ。 これは仕事でツーマンセルは業務命令。 先代は、僕と組めと言ったじゃない。 それに対して渋い顔はしたけどさ、それでも組むって確かにアナタは言ったよね。 なのにさ、土壇場になってさ、「やっぱり嫌です、別行動で」、そりゃないわ。 てな訳で、繋いだ手を更に強く握りしめ、 「ダメです、却下です。手を離すのは印を結ぶ時だけです」 能面顔で言ったった。 僕の断固とした拒否に、力弱いため息が重なった。 それを耳で聞きながら、差した鍵をグルリと回転させてやる……と、 ガチャ、 鈍くこもった金属音。 開いた……よし、行くか。 ドアの取っ手を手前に引いて、「失礼します」と声を掛け、僕達は別荘内におじゃましたのだ。
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