第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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ブワっと全身粟立った。 今の……なに……? ガラスが割れた……音だよね、 しかも大量……1つや2つじゃない、 もっともっとたくさんだ、 「水渦(みうず)さん……今の音、聞きました?」 横を向いて目線を下げて、性格に難はあるけど頼れる先輩霊媒師、水渦(みうず)さんに問いかけた。 すると彼女は呆れたような顔をして(この呆れ顔、見るの何度目だろ)、 「あんな大きな音、聞こえたに決まってるじゃないですか。しかも、誰かさんが別行動を拒むせいで、同じ場所にいるのですから」 はぁ……と露骨に息を吐き、僕の事など二の次で目線を前に飛ばしてる。 や、も、言い方。 そりゃあね、デカイ音だし聞こえてないとは思ってないけど、そうじゃなくて、「今の音、聞きました?」→「はい、奥の方から聞こえましたよね」→「やはり悪霊でしょうか?」→「おそらく。岡村さん、行ってみましょう!」、こんな流れを期待して……ま、いっか。 密かに音にビビったけれど、安定の水渦(みうず)節にかえって気持ちが落ち着いた。 「音がしたのはこの奥です。たぶんキッチン? とりあえず行ってみましょう」 気を取り直して肉厚ハンドを引きながら、長い廊下を真っ直ぐ進む。 その突き当たりには、閉ざされた白木のドアが。 この向こうには悪霊がいるはずだ。 たぶんソイツが僕らの気配に気が付いて、ガラスの食器を割ったんだ。 水渦(みうず)さんは、射るよな目線でドアを見て、同時、繋いでない右の手指に蒼い霊力(ちから)をチャージした。 そうか……これは備えだ。 ドアを開けたその瞬間に、悪霊は僕らを襲ってくるかもしれない。 これは僕も備えなくっちゃと、水渦(みうず)さんと色違い、霊矢の準備をしようとしたけど、いきなりピンチに陥った。 僕が霊矢を使うには、まずは両手で印を組まなきゃ発動しない。 なのに今、僕の片手は塞がっている。 一度離して長い印を組むべきか、……でもな、離せばきっと、懐かない野良猫はどこかに逃げるに決まってる。 どうしよ…………んーんー…………ま、いっか!(2回目) とりあえずは丸腰で行ってみよう! 多少のコトなら癒しの言霊があるし、なんとかなるだろ! うまい具合にこの2か月間、水渦(みうず)さんと会ってないから、僕が霊矢を習得したのをまだ知らない。 丸腰に疑問を感じてないようだ。
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