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ブワっと全身粟立った。
今の……なに……?
ガラスが割れた……音だよね、
しかも大量……1つや2つじゃない、
もっともっとたくさんだ、
「水渦さん……今の音、聞きました?」
横を向いて目線を下げて、性格に難はあるけど頼れる先輩霊媒師、水渦さんに問いかけた。
すると彼女は呆れたような顔をして(この呆れ顔、見るの何度目だろ)、
「あんな大きな音、聞こえたに決まってるじゃないですか。しかも、誰かさんが別行動を拒むせいで、同じ場所にいるのですから」
はぁ……と露骨に息を吐き、僕の事など二の次で目線を前に飛ばしてる。
や、も、言い方。
そりゃあね、デカイ音だし聞こえてないとは思ってないけど、そうじゃなくて、「今の音、聞きました?」→「はい、奥の方から聞こえましたよね」→「やはり悪霊でしょうか?」→「おそらく。岡村さん、行ってみましょう!」、こんな流れを期待して……ま、いっか。
密かに音にビビったけれど、安定の水渦節にかえって気持ちが落ち着いた。
「音がしたのはこの奥です。たぶんキッチン? とりあえず行ってみましょう」
気を取り直して肉厚ハンドを引きながら、長い廊下を真っ直ぐ進む。
その突き当たりには、閉ざされた白木のドアが。
この向こうには悪霊がいるはずだ。
たぶんソイツが僕らの気配に気が付いて、ガラスの食器を割ったんだ。
水渦さんは、射るよな目線でドアを見て、同時、繋いでない右の手指に蒼い霊力をチャージした。
そうか……これは備えだ。
ドアを開けたその瞬間に、悪霊は僕らを襲ってくるかもしれない。
これは僕も備えなくっちゃと、水渦さんと色違い、霊矢の準備をしようとしたけど、いきなりピンチに陥った。
僕が霊矢を使うには、まずは両手で印を組まなきゃ発動しない。
なのに今、僕の片手は塞がっている。
一度離して長い印を組むべきか、……でもな、離せばきっと、懐かない野良猫はどこかに逃げるに決まってる。
どうしよ…………んーんー…………ま、いっか!(2回目)
とりあえずは丸腰で行ってみよう!
多少のコトなら癒しの言霊があるし、なんとかなるだろ!
うまい具合にこの2か月間、水渦さんと会ってないから、僕が霊矢を習得したのをまだ知らない。
丸腰に疑問を感じてないようだ。
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