第六章 霊媒師OJT-2

153/153
前へ
/2550ページ
次へ
「ごはんはコンビニあるし、ガス屋さんは明日来るよ! お風呂は1日くらい入らなくてもなんとかなるし!」 「ユリちゃん……いいの? それで?」 女の子が1日お風呂に入れないって大事件じゃないの? 「うん、 仕方ない。今日はさ、ママに逢えると思ってたから、引っ越し屋さんとかガス屋さんの立ち合いで邪魔されたくなかったの。まさか婆ちゃんにまで逢えると思わなかったけど今日は本当に楽しかった」 ああ、そうか。 だから、あえて今日は誰も来ないようにしてたのか。 ただの大ざっぱな子だと思っちゃってごめんね。 「ユリ、じゃあよ、今から照明買いに行こうぜ。俺の車出してやるから」 言いながら車のキーをクルクル回転させて見せるのは社長だ。 「この時間ならまだ店も開いてるし、取り付けも俺がやってやるから。で、ついでにどこかでメシ食ってこうぜ」 「いいんですか!?」 目を真ん丸にして喜ぶユリちゃんは暗がりの猫みたいでかわいらしい。 って、メシも食ってこうって、まさか社長餌付けする気じゃ……? 「ああ、いいよ。真さんにユリの事、頼まれてるしな」 「ありがとうございます! あ、でも、もう6時半です……お店、終わっちゃうんじゃないですか?」 「ははっ! なわけねぇだろ。夜10時まで開いてるよ」 「嘘っ!!」 「マジ」 「ウチの田舎じゃ夜7時が限界だけど」 「おまえどんなトコ住んでたんだよ」 「さすが東京……」 「都下だけどな」 「じゃ、行くか。カーテンも買おうぜ」 「はい!」 飛び跳ねるように立ち上がったユリちゃんは、にこにこ笑ってとても嬉しそうだった。 僕もなんだかホッとした。 楽しかった家族の再会。 その夜に電気もないカーテンもない布団もない、そんな淋しい部屋に女の子をたった1人残してなんて帰れないもの。 「ほら、エイミーもジジィも一緒に行くぞ」 そう言って玄関に向かう社長の後を追いながら、僕らはそれぞれ元気に返事をすると社長のソウルカーに乗り込んで夜の買い物へと繰り出したのだった。 霊媒師OJT___了 
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2373人が本棚に入れています
本棚に追加