2366人が本棚に入れています
本棚に追加
『……こんな所に…………アベックが来た……？』
異形の霊は目線を下にガッツリ手を視て呟いた。
その直後。
ツーマンセルを組むコト半日、ここでようやく僕らの息がピタリと合った。
「違います！」
「チ、チガウし！」
言い回しはそれぞれだけど、僕らは同時に否定の言葉を口にした、……が、しかし、異形の霊は首を傾げて食い下がり、
『…………で、でも、手……繋いでる、』
遠慮がちに指を差し、僕らの否定に疑問を投げた。
「あ、えと、これには事情がありまして、」
僕はテンパりシドロモドロにモゴモゴ言い訳。
対し隣の水渦さんは、大きく舌打ち怒涛の力で手を解くと、
「だから別行動が良かったんです！ 岡村さんがくだらない事言い出すからあらぬ誤解を受けました！ もう嫌です！ 此処で二手に別れましょう！ 解散！ 自由行動！ サヨナラ！」
声を大に文句を言って踵を返して歩き出す。
焦った僕は後ろから手を掴み「ちょっと待って！」と引き留めた。
水渦さんは斜めに振り向き、超全力で拒絶を始めて……
「待ちません！ 離してください！」
「離しませんよ！」
「しつこい！ 貴方といるとペースが崩れます！ ウンザリです！ 控え目に言っても迷惑です！」
「迷惑って酷いな！ 僕は良かれと思って、」
「”良かれ” の押し付けですか？ 誰も頼んでませんよ！ むしろ、ずーーーーーーーっと拒否してたじゃないですか！ 私は最初から別行動が良かったんです！ 仲良しごっこがしたいならヨソを当たってください！」
「だーかーらー！ ”仲良しごっこ” じゃなくて仲良くしたいんです！ なんで分かってくれないかな！」
バチバチと火花を散らし、僕らは激しく言い合った。
仕事中だし、こんなんしている暇はないのに、このわからず屋になんて言ったら良いものか、それが分からず思わずムキになったんだ。
あろうことか現場で喧嘩、しかも異形の霊の目の前で。
ダメ霊媒師にも程があるけど、そんな僕らを止めに入ってくれたのは＿＿＿＿
『ちょ、ちょっと待って、２人とも落ち着いて』
＿＿＿＿当の異形の霊だった。
最初のコメントを投稿しよう！