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立ったまま、肩を落として涙を流す。
藤崎さんは、なんだかとても小さく視えた。
元々大きな霊じゃない。
背は僕よりも低そうだし、霊体も薄くてヒョロリとしてる。
袖から出ている両の手は、枯れ木のようにシワシワで、ある程度の年齢が想像出来る……が、なんてったってお顔が深海魚なのだ、実年齢は分からない。
本人曰く『年がバレちゃう』とのコトだからそれなりなのだろう。
そして……
藤崎さんは、別荘が保養所として機能していた頃、その会社の社員さんだったんだ。
何度かご家族と来た事があると言っていた。
そしてとても楽しく幸せだったとも。
思い出の場所だからここに来たのかな?
ん……きっとそうだろうな……ここで過ごした家族の記憶は大事な大事な宝物なのだろう。
それならなんで?
そんな大事なこの場所で、篠原様に害を成すのはなんでだろう。
変えてしまったから?
篠原様は保養所を減築して建て替えた。
思い出を壊されたと思ったのだろうか……?
それにしたって……僕はいまださめざめ泣いている藤崎さんを視た。
立ったまんまで背中を丸め、嗚咽を漏らして震えてる。
こんな姿を視ていると、誰かに対して攻撃なんか出来るのか? と思ってしまう。
どちらかと言えば、この霊は攻撃をされる側じゃないだろうか。
僕は藤崎さんが泣き止むのを待っていた。
急かさず責めず、少しずつ事情を聞かせてもらえたらと思っていた。
だがしかし……この時僕はウッカリ失念してたのだ。
今回の相方が、水渦さんである事を。
腕を組んで無表情。
泣いてる霊をジッと視ていた水渦さんは、淡々と抑揚無しにこう言った。
「なるほど。貴方は3年も前から此処に憑りついていたのですね」
刺を含んだ不意打ちに、藤崎さんは固まった。
僕はハラハラ焦ってしまい、思わず口を挟んでしまう。
「ちょっ、”憑りつく” なんてそんな言い方しなくても!」
すると彼女はキョトン顔。
遠慮も無しに藤崎さんを凝視して、そのあと僕に向き直り、
「言い方、何か間違ってました? 死して身体と切り離されて、そこから黄泉に逝くでなく、現世の、しかも他人の所有建物に居座っているのです。生者なら不法侵入で捕まります。ですが藤崎さんは死者なので ”憑りつく”、という表現が当てはまるの思うのですが」
と、さらに傷を深めるような解説をしてくれたのだ。
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