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「はぁ……岡村さんは甘いんですよ。この霊が家族の話で泣き出したから同情したんですか? “思ったより良い霊そうだ”、”何か事情があるのでは”、大方こんな事を考えたのでしょう。考えるのは構いません。それは個人の自由です。ですが忘れていませんか? この霊と4人の仲間は篠原様に害を成しています。はぁ……さっきは篠原様に同情し、今度は悪霊に同情ですか。まったく、節操の無い方ですね」
心底呆れた表情で、水渦さんは吐き捨てた。
頬がカァッと熱くなる。
言ってる事は正論で、返す言葉が見つからない。
篠原様のご依頼で、僕らはここにやって来た。
優先すべきは苦しまされた篠原様、……そうだ、それは僕も分かってる、忘れてないよ。
でもさ、水渦さんの言った通り、藤崎さんが予想に反して良い霊そうで、事情が知りたくなったんだ。
滅するだけが仕事じゃない、そう思うのに、反論したいと思うのに、言葉は喉に詰まってしまった。
水渦さんは、黙った僕を気にするでもなく藤崎さんに向き直る。
「藤崎さん、簡潔にお伺いします。貴方は何故この場所に固執するのでしょうか。思い出があるのかもしれません。ですが今は改築されて、当時の面影はないはずです。それでも此処に取り憑き続け、篠原様に害を成す理由を教えて下さい。余計な話はいりません。私は貴方の家族の話に一切興味はありませんから」
キツイ言い方だ。
簡潔に答えてほしい、その気持ちは分かるけど、どうしてそんな聞き方になるのだろう。
藤崎さんは機械じゃない、命はなくともヒトなのだ。
ヒトには当然心があって、そして当然感情もある。
棘を持って接すれば、棘を持って返されるんだ。
藤崎さんは涙の跡をつけたまま、水渦さんをジッと視る。
白目と黒目が反転している異形顔。
大きな口をビーッと横に伸ばしてくれた、あの笑顔は消えていた。
藤崎さんは両目を吊り上げ、大きな口からギザギザの歯を覗かせながら、搾るようにこう言ったんだ。
『シノハラ……シノハラシュウジのせいで人生が狂ってしまった。だから私は……私達は、あの男をギャフンと言わせる為に此処にいるの……!』
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