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『それで……シノハラシュウジの事だよね。岡村さんだから話すよ。……あのね、シノハラと私は、昔……、』
藤崎さんが話を始めた時だった。
突如、キッチンの四方の壁から、シュバッっとヒトがすり抜け飛び出し、あっという間に僕の前に立ったんだ。
全部で4人、だけど生者じゃない。
だって全員異形の顔で、揃いも揃って深海魚。
そのうち1人は別荘に来た時外から視えた、窓際の男性のようだった。
藤崎さんを守るように、彼らは僕をキッと睨むと……
『藤さん、助けに来たよ!』
向かって右端、そこに立つ深海魚さんが震える声でそう言った。
『こ、こう視えて、む、昔はワルだったんだ! 逃げるなら今のうちだぞ!』
右から2番目の深海魚さん、自称 ”昔はワル” らしいけど、膝がガクガク笑ってる。
『顔はダメだ! ボデーにしな、ボデーに!』
その隣の深海魚さん、ちょ、それ、昭和不良の定型文、……でもって、すっごい内股なのも気になっちゃう。
『 ココは新人類が来る所じゃないぞ! お帰りはアチラ! ほな、バイナラ!』
左端の深海(ry 、“新人類” と “バイナラ” はネットで読んだ事があるぞーーー!
「えっと……ちょ……あの……」
昭和ワードがザックザク。
僕が呆気にとられていると、藤崎さんはアワアワしながら、
『みんな落ち着いて! だいじょうV! だいじょうVだからぁ!』
と、やっぱり昭和ードで止めている。
……………………あーうん、賭けても良いや。
この霊達、ぜったい悪霊じゃないよ。
それまで黙ってスマホを視てた、水渦さんが顔を上げてコチラを視てる。
彼女は短く息を吐くと、
「ややこしいのが増えましたね。でも……イチニイサンシイ……これで全員揃った、………………捕まえる手間が省けました」
と独り言ち、そしてその後僕を見て言ったんだ。
「岡村さん、コイツら全員撃ってもいいですか? そうすれば任務完了。すぐにでも帰れますけど、」
アイター。
この人ホントにブレがない。
ある意味スゴイと感心するよ。
でもね、分かってると思うけど僕の答えはこうだ。
「ダメに決まってんだろ。全員集合、話はこれからです!」
大きな声でそう言うと……あれ? あれれ?
水渦さん……今、笑った……?
一瞬の出来事で、しかもまた無表情に戻ってしまって、果たしてホントに笑ったのかが分からない。
でも、
「はぁ……まったく岡村さんは甘すぎます、呆れて物が言えません。
とりあえず……そうですね、車に行って食料を持ってきてください。なんだかおなかが空きました」
と、言い方は素直じゃないけど、彼らを撃たず話を聞く事に同意してくれたのだ。
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