第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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リビングに移動した。 ご自宅の純和風と打って変わったモダンな造り。 広さはたぶん20畳は下らない。 床は一面白木張り、床と合わせた白い壁には大きな絵画が飾られている。 別の壁には大型テレビが取り付けられて、両サイドには背の高いスピーカー。 焦げ茶色の大きなソファはL字の形に配置され、その内側には同じく焦げ茶のローテーブルがあった。 『良かったら座ってよ。なんて、私の家じゃないんだけどさ』 そう言ったのは藤崎さんで、”勝手知ったる他人のオウチ”、慣れた様子だ。 水渦(みうず)さんはテレビの正面、ソファのL字の短い方に腰かけた。 僕はと言えばテーブル前で膝を着き、車から持ってきた食料入りのビニール袋をガサゴソ中。 なにせいっぱい買ったから(会社の経費で!)なんでもあるよ。 パンでしょ、おにぎりでしょ、お菓子でしょ、パウチタイプのゼリーでしょ、それともちろん飲み物だって、コーヒー紅茶にジャスミンティー、炭酸もスポーツ飲料もある。 それらを手に取りテキトウに組み合わせ、7つのセットが完成したら、端から順にテーブルに並べてく……ヨシ、完成! 「みなさーん! テーブルの上にお1人様1セット、軽食をご用意しましたー! アルコールはないけど、食べて飲んで、気楽にお話しましょう!」 大きな声でそう言うと、藤崎さん&深海魚なメンズ達がソワソワしながら集まってきた。 目線はテーブル、軽食セットをチラチラ視てるんだ。 ふふふ、気になってる気になってる。 幽霊だから食べられないとか思ってるのかな。 ダイジョブですよ、食べられないけど味わえますから。 …… ………… 「それでは水渦(みうず)さんもみなさんも、どうぞ召し上がれ!」 僭越ながら僕が仕切らせていただいた。 生者と死者も関係なしにゴハンタイムの始まりです。 生者チームはクロワッサンをモグモグしながら、ジャスミンティーをいただいた。 幽霊チームはどれにも手はつけないけれど、『えぇ!?』とか『なんで!?』とか『うまい!』とか言いながら、両手で頬を押さえてる。 それからしばしの時間が経って、全員お腹が落ち着いたところで簡単な自己紹介をする事になったのだ。
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