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悪くない空気の中、まずは僕から「岡村英海、30才、猫が好きです!」と自己紹介。
ついでに「こちらは水渦さん」と紹介し(だって黙ってるんだもん)、そして、僕ら2人は篠原様から雇われた霊媒師である事を告げた。
それを聞いた藤崎さんは、目が零れそうなほど視開いて、
『ちょっとタンマ! そうだったの!? 私はてっきり、ただのアベックだと思ってたのに!』
と、コッチこそ「えぇ!?」と驚くビックリ発言。
や、待って、僕らのコト、本気で100%ただのアベックだと(マネしてみた)思ってたんだ。
そりゃあね、僕らもハッキリ言ってないし(色々濃くてそれどころじゃなかった)、それにしたってチョットくらい何か変だと思わなかったん?
通りすがりじゃないし、鍵開けて入ってきたし、2人揃って幽霊視えるし、話の内容も……上げればキリがない。
すごいよ藤崎さん……この霊もしや天然か、もしくはある種の逸材か。
そんな藤崎さんに対し、残る4人は霊媒師だとは知らずとも、胸騒ぎはしたらしい。
どこかの社名が描かれた車……こんな所に場違いなスーツ姿の2人組み……幽霊が視えるようだし驚かないし……しかも女の子の方は尋常じゃない圧がある……とてもじゃないけど遊びに来たとは思えない。
だからこそ、用心しながら陰から様子を視てたのに。
キッチンの藤崎さんはウッカリ食器を割っちゃうわ、普通に話をし始めちゃうわ、ハラハラの連続だったそうだ。
そのうちに藤崎さんが泣き出しちゃって、視るに視かねて助けに来たと言うのだが……やだ、良い霊達じゃない。
そんなこんなで僕らに警戒してたけど、話してみれば感じが良いし、パンもゼリーも涙が出るほど旨かった。
あまりにおいしく感激しちゃって、最終的には『パンをくれる子にワルはいない』となったんだって(パンが僕らを繋いだ)。
とまぁ、雑談を挟んだところで、お次は死者チームの番だ。
端から順に自己紹介が始まったのだが、
『中沢治です』
『庄司三男です』
『中島等です』
『伊藤順一です』
『藤崎茂です』
あまりにも簡潔だった。
その簡潔さを補うように、藤崎さんが静かな声で話し出す。
『…………あのね、私達ね、生きてた頃はみんな同じ会社に勤めていたの。部署はそれぞれ違っていたけど、年も近いし仲が良かったんだ』
そうだったんだ。
生者の頃から仲が良かったんだな。
でも……仲が良すぎないか?
死んでまでこんな所に一緒に居続けるなんて。
それはやっぱり篠原様が原因なんだろうな。
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