第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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『岡村さん、さっきの話の続きをしてあげる。私、言ったでしょう? シノハラシュウジのせいで人生が狂ってしまったって。シノハラは同じ会社の上司、部長だったの。良い上司じゃなかった。部下の手柄を横取りして出世したイヤな奴、…………私達はね、定年まで働けなかったんだ……そう、リストラされたの……! あんなに仕事を頑張ったのに、会社の為に尽くしたのに、それなのにシノハラは……!』 ____仕方ないだろ、バブルが弾けたんだ、 ____経費削減だよ、 ____アンタ達は年を食ってる分給料も高い、 ____その辺から整理をしないと会社が傾く、 ____ハァ? これからどうすれば良いかって? ____知らないよ、転職でもリタイヤでもご自由にどうぞ、 ____もう、ウチの社員じゃないんだ、 ____知った事か! 『こ、こう言って……わ、笑ったんだ……! バ、バカにするなって思ったよ、こんな酷い話があるかとも思った、高校を卒業して何十年も働いて、コツコツコツコツ頑張って、なのにこの仕打ちはなんだ! って……泣けてきたんだ、……百歩譲って、リストラを受け入れようにも、あ、あ、あんな言い方……! 悔しくて悔しくて……その後も苦労の連続だった……50代半ば過ぎ、転職するには難しくリタイヤするには早すぎる、それでもなんとか仕事を見つけて頑張ったけど、家族には苦労をいっぱいかけた、』 途中、藤崎さんは堪え切れずに涙を流し、歯を食い縛って話してくれた。 他の4人も泣いてしまって、眉間にシワを寄せている。 僕は、僕はさ、聞いた話は酷いと思うし同情もしてしまうけど、でも……にわかに信じがたくて、……だって、篠原様は良い人だった。 大人しそうな小柄な人で、言葉遣いも丁寧で、待たせた僕らを責めもしないで「来てくれただけでありがたい」と感謝までしてくれたんだ。 今の話と篠原様が、どうにもこうにも結びつかない。 ただ……先代みたいな例もある。 若い頃は尖っていたが年を取って丸くなる、昔と今じゃキャラがぜんぜん別人みたいに変わってる……的な。
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