第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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『『『『『「……へ?」』』』』』 死人(しびと)5人と生き人1人、計6人は見事なまでのハモリをみせた。 で、で、揃いも揃ってお口ポカンで互いの顔を見合わた後、またも一斉に話し出す。 『どういう事!?』 『アイツはシノハラじゃないの!?』 『”シュウジ” って下の名前も一緒じゃない!』 『背格好も一緒だし!』 『似てるだけ? いやでも確かに、』 大騒ぎの5人衆、あばばあばばと右往左往だ。 そんな5人に水渦(みうず)さんはスッと手を上げ、無言の圧で黙らせた。 そして、ポケットからスマホを取り出し、画面を見ながら嬉々としてこう言った。 「先程ネットで調べました。ここにあった元保養所は、Y県内にある企業、〇〇社所有だったもの。貴方方もそこの社員だったのでしょう?」 〇〇社? ネットで調べた? ……あ、そう言えば……さっき水渦(みうず)さんは、泣き出した藤崎さんを横目で見ながら、1人ポチポチスマホを弄ってたんだ。 僕はあの時、こんな時にネットか? って思ったけど、これを調べていたんだな。 具体的な社名を出され5人は数瞬固まった。 そしてその後互いに顔を視合わせて、今度は中沢さんが声を上げた。 『水渦(みうず)さんと言ったよね、私は……インターネットに疎くて、そういうのよく分からないんだ。でも、……当たってるよ。ここにあった保養所は○○社が持っていたし、私達はそこの社員だった』 残る4人もウンウンと頷いている。 どうやら間違いないみたいだ。 「ネットは便利です。ここの住所プラス ”元保養所” で検索すれば、簡単に社名が出てきました。○○社、Y県内では大企業として有名なのですね。その○○社も一時は危なかったとあります。90年代に入り、いわゆるバブル崩壊後に倒産寸前までいったと……、その後、大々的な人員削減を実施し会社が立て直ったともあります」 スマホの四角い画面を見ながら、水渦(みうず)さんが記事を読み上げる。 ”○○社は大々的な人員削減をして倒産を免れた”……か。 文字にすればたったの一文。 倒産も、リストラも、よく聞く話で珍しくもなんともない。 けどさ、その当事者はたまったものじゃないよね。 僕も前に、社員の立場で倒産を経験した。 昨日までは会社員で今日から無職……あの心細さといったらなかったよ。 この先生活どうしようって、独身の僕でさえ悲観した。 まして霊達(かれら)は家族持ち、どんなに怖かった事だろう。 そんな生前を思い出したのだろうか。 霊達(かれら)は少し押し黙り、だけど今度は庄司さんがこう言った。 『インターネットにはそんな事まで書いてあるのか……ふん。だけどね、人員削減なんてキレイなコトバで言わないでほしい。俺達はシノハラに切られたんだ。罵られ、バカにされ、大笑いされながらね。アイツ、大嫌いだ。…………水渦(みうず)さんは、別荘(ここ)に来るシノハラが、俺達の知ってるシノハラじゃないって言うけど……だったら誰なの? 確かに、俺達がシノハラを視るのはウン十年振りだけど、フルネームも背格好もシノハラだった。説明してよ、』
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