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水渦さんの説明に、霊達は考え込んでいた。
シノハラさんと篠原様を、同じ人だと思い込んでいたんだもん。
それを今更別人ですと言われても、『ハイ、そうですか』とはいかないのだろう。
霊達が沈黙している間。
デザートの代わりだろうか、水渦さんが山積みゼリーに手を伸ばしたのだが、テーブルが大きすぎて届かずにいた。
僕は頼まれてもいないのだけど、山の中から ”マンゴー味” を手にとって、「はい」と一言手渡した。
「…………ありがとうございます」
水渦さんは小さく言って受け取るも、パウチの容器をジッと見たまま食べようとしない。
あ、あれ? どうしたの?
もしかして、他の味が良かったのかな? かな?
「えと、ごめん。勝手に選んじゃった。マンゴー味は嫌でしたか? 前にジャッキーさん家で打ち上げした時、水渦さん、マンゴージャムを美味しそうに食べてたから好きなのかなぁって。勘違いなら替えますよ。なにが良いですか?」★
僕が慌ててそう言うと、水渦さんは首を細かく横に振り、
「いえ、替えていいただかなくて結構です。私もマンゴー味を選ぶつもりでした。…………よく、覚えてましたね」
呟きながらゼリーの蓋を開けたんだ。
「覚えてますよ。あの時の水渦さん、黙々と食べてたけど、美味しそうな顔してたから」
「………………ふぅん、」
あ、余計なコト言っちゃったかな。
チョー能面だし、黙っちゃったし、もしかして……「そんな事まで覚えてるとかキメェ!」とか思ってたりして。
ヤ、ヤバイ! 話題変えようっと!
「ね、ねぇ、水渦さん。さっきの年齢当て、すごかったですね。僕、ぜんぜん気がづかなかった。霊達の言う事、そのまま信じちゃったから、シノハラさんと篠原様が別人だって思わなかった、」
本当にそうだ。
言われてみればそうかなって思うけど、なんてったって霊達の顔は深海魚。
あの顔から享年を予想するとか不可能だよ。
★ジャッキーの家で3人で打ち上げした時、水渦がマンゴージャムを黙々と食べたシーンがココです。
https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=600&preview=1
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