第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

47/74
前へ
/2550ページ
次へ
水渦(みうず)さんの説明に、霊達(かれら)は考え込んでいた。 シノハラさんと篠原様を、同じ人だと思い込んでいたんだもん。 それを今更別人ですと言われても、『ハイ、そうですか』とはいかないのだろう。 霊達(かれら)が沈黙している間。 デザートの代わりだろうか、水渦(みうず)さんが山積みゼリーに手を伸ばしたのだが、テーブルが大きすぎて届かずにいた。 僕は頼まれてもいないのだけど、山の中から ”マンゴー味” を手にとって、「はい」と一言手渡した。 「…………ありがとうございます」 水渦(みうず)さんは小さく言って受け取るも、パウチの容器をジッと見たまま食べようとしない。 あ、あれ? どうしたの? もしかして、他の味が良かったのかな? かな? 「えと、ごめん。勝手に選んじゃった。マンゴー味は嫌でしたか? 前にジャッキーさん()で打ち上げした時、水渦(みうず)さん、マンゴージャムを美味しそうに食べてたから好きなのかなぁって。勘違いなら替えますよ。なにが良いですか?」★ 僕が慌ててそう言うと、水渦(みうず)さんは首を細かく横に振り、 「いえ、替えていいただかなくて結構です。私もマンゴー味(これ)を選ぶつもりでした。…………よく、覚えてましたね」 呟きながらゼリーの蓋を開けたんだ。 「覚えてますよ。あの時の水渦(みうず)さん、黙々と食べてたけど、美味しそうな顔してたから」 「………………ふぅん、」 あ、余計なコト言っちゃったかな。 チョー能面だし、黙っちゃったし、もしかして……「そんな事まで覚えてるとかキメェ!」とか思ってたりして。 ヤ、ヤバイ! 話題変えようっと! 「ね、ねぇ、水渦(みうず)さん。さっきの年齢当て、すごかったですね。僕、ぜんぜん気がづかなかった。霊達(かれら)の言う事、そのまま信じちゃったから、シノハラさんと篠原様が別人だって思わなかった、」 本当にそうだ。 言われてみればそうかなって思うけど、なんてったって霊達(かれら)の顔は深海魚。 あの顔から享年を予想するとか不可能だよ。 ★ジャッキーの家で3人で打ち上げした時、水渦(みうず)がマンゴージャムを黙々と食べたシーンがココです。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=600&preview=1
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加