第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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「篠原様とシノハラ氏。2人の顔が似てようが似てまいが、そこは問題ではありません。霊達(かれら)は言っていたではありませんか。 ”背格好が似ている” と。そして ”顔が似ている” とは一言も言いませんでした。 それが何を意味するか。今の霊達(かれら)は、あまり視えていないのですよ」 水渦(みうず)さんは、パウチのゼリーをちゅーっと吸いながら、ラフな感じにそう言った。 「それって……目が悪いって事ですか? 老眼? それともご病気? でもそんな感じはしなかった。僕と目が合うし、ソファに座る時だってぶつかる事なく座ってた」 視えてないとは思えない、そんな動きだったんだよなぁ。 何を根拠に? それに対するヒントはあった? 僕が視落としただけ? なんで? どうして? 分かんない、ぜんぜん分かんない! 「岡村さん、早とちりはしないでください。視えてないのではなく、あまり視えていない(・・・・・・・・・)、です。霊達(かれら)の顔は、今どうなってます? ヒトの顔ではありません、深海魚によく似ています。おそらくあれは、ここ数か月の別荘内でのポ現はもちろん、それ以前から何らかの理由で現世の物質に干渉する為、電気の霊体(からだ)使いすぎた(・・・・・)のでしょう。その反動で自身の霊体(からだ)にエラーが出た、……要は部分的に妖怪化したのです」 「……そのエラーのせいで、ガチで魚眼レンズみたいに視えてるってコト? ……マジか」 「歪んだ視界でも、慣れた場所なら問題はありませんし、岡村さんと目を合わせる事も可能です。ですが、ヒトの正確な個体識別は難しいでしょうね。ましてや、霊達(かれら)がシノハラ氏と最後に会ったのはウン十年前と言ってました。曖昧な記憶と視力の中、フルネームが同じで背格好が似てる、そこへもってきて、○○社の元保養所に別荘を建てた、……これで誤解したのではないでしょうか」 あぁ……なるほどね。 そりゃあ誤認しちゃうかも。
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