第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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そういう事か。 部分的な妖怪化。 それで顔がヒトではなくなり深海魚になったんだ。 なぜ深海魚? とは思うけど、5人はどうやら釣り好きみたいで(生前は釣り旅行に出かけてたと言ってたし)、その影響……だったりするのかな? その辺は分からないけど、それよかもうひとつ……気になる事があるんだ。 「ねぇ、水渦(みうず)さん。霊達(かれら)は元に戻れるのかな、……それはつまり……今は部分的な妖怪化で止まってるけど、この先、妖怪化がさらに進むなんて事は……あったりする?」 そう、僕がこんな事を言い出したのは、前に行った神奈川の現場、そこで会った女の子の幽霊の絵里ちゃんを思い出したからだ。 彼女も似たようなものだった。 自身の霊体(からだ)の電気を削り、それを霊力(ちから)に現世のフィギュアを動かしていた。 だがその代償は高くつき、削った分の反動で、足にビッシリ水膨れが現れたんだ。 言い方は悪いけど……その足は異形に近く、放っておけば、電気を削り続ければ、最終的に悪霊化は免れない運命だった。 そうさせない為、黄泉の国へと送り出して事なきを得たのだが…… 霊達(かれら)はどうしたら良いのだろう? 霊達(かれら)はどうなってしまうのだろう? 僕の質問に水渦(みうず)さんはまたもや即答だった。 「妖怪化が進む可能性ですか、当然あるでしょうね」 「やっぱりか……それ、どうにかなりませんかね……? シノハラさんと篠原様が別人だと分かれば、霊達(かれら)はもう悪さをしないと思うんです。そりゃあもちろん、なんの落ち度のない篠原様を怖がらせたのは許される事じゃない。でも、霊達(かれら)は脅かそうとは思ったけれど、殺そうだなんて思ってなくて、誤解が生んだ不幸というか、生前の霊達(かれら)も辛い思いをしたわけだし、それに、」 言えば言う程しどろもどろだ。 霊達(かれら)を救いたい、そう思うのは本心だけど、同時、篠原様の気持ちを思えば強くも言えず…………はぁ、僕は中途半端だ、……でもさ。 水渦(みうず)さんはゼリーの容器を持ったまま、途中で黙った僕に向かって言ったんだ。 「ゴチャゴチャと御託を並べてますが、要は5人を救いたいと言いたいのですか?」 コクコクコクコク!(激しく頷く) 「そうですか、……ま、良いんじゃないですか? 今回、篠原様から霊を滅してくれとは言われてませんし____」 ★神奈川の現場で絵里ちゃんの水膨れについて話しているのがこの辺りです。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=548&preview=1
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