第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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…………意外だった。 自分から聞いといてなんだけど、僕はてっきり…… ____はぁ……岡村さんは考えが甘いです、 ____面倒だから撃ってしまえば良いんですよ、 くらいのコトは言われると思ってたのに、”良いんじゃないですか” だって。 「なにをポカンとしてるんです? 私は別に霊達(かれら)に同情した訳でも、 ”良い(ひと)だから救いたい” などと甘い考えを持ったのでもありません。これは仕事で、あくまでも優先すべきは篠原様の意向です。あの方々の一番の願いは、この別荘で心穏やかに暮らす事。滅する事ではありません」 ……そ、そうだよね。 今回の依頼内容、それに沿った選択だよね。 でもいいや。 理由はどうあれ霊達(かれら)を救う、これに同意をしてくれたんだ……と、嬉しくて、密かに拳を握っていた時、僕の隣で聞こえるか聞こえないか、そんな小さな呟き声が聞こえたの。 「……ま、約束もありますしね、」 約束……?  それってどういう…………あ、……もしかして……春にした約束の事を言ってるのかな。 ____これからは、むやみやたらに霊を滅しません、 この事を言ってるのかな? そうなのかな?  約束、守ってくれてるのかな? ……うん、きっとそうだ。 そう考えたら、なんだか嬉しくなってきた。 この人、言葉はキツイし容赦はないし、素直でもないわからず屋ではあるけれど(言い過ぎ?)、こういうところもあるんだよ。 だからかな、結局は憎めないし、キライにもなれないの。 なんてコトを思ってたのに…… 「岡村さん……なにをニヤニヤしてるんですか……? 顔、気持ち悪いです」 水渦(みうず)さんは僕から少し距離を取りつつ、引き気味にそう言ったんだ。 えぇ!? なにそれ! ひどくなーい!? あんまりなご指摘に(てかそんなにキモかったんだろうか……?)僕がアワアワしていると、取った距離はそのままに真面目な顔でこんな事を聞いてきた。 「それで、岡村さんはどうされるおつもりですか? 霊達(かれら)を救いたいと言うからには、何か策があるのでしょう?」 「え!? …………策、ですか……?」 「策です。どうすれば妖怪化を止め救う事が出来るのか、その策です。まさか考え無しですか? 偉そうな事を言っといて、私に丸投げですか?」 「いや! その! 決して丸投げするつもりはありません! 一応、策はあるんです……って、策と言える程じゃないかもだけど、えっと……聞いちゃいます?」 ハイスキルな霊媒師、水渦(みうず)さんに申告するには単純すぎる策だから、どうもゴニョゴニョしてしまう……が、 「聞くに決まってんだろ」 こう斬り込まれたら、3秒以内に言わざるを得ない。 「や、あの、ホント、シンプルな考えなんですけど、妖怪化をこれ以上進行させない為にはズバリ成仏しかないと思うんです。このまま現世に留まったとして、もう別荘(ここ)にはいられません。知らない土地に移り住んで、今度はそこで本物の悪霊に絡まれるかもしれない。それだけじゃない、慣れない場所で魚眼の視力じゃ不自由もあるでしょう。そういったストレスが長年溜まれば、妖怪化から悪霊化も考えられる。……リスクが高いんだ。だから黄泉に旅立つのがベストだと思うんです。……ただ、ひとつ問題が。僕……【光の道】を呼べないんですよね、……はは……ははははh」
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