第七章 霊媒師休日

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「岡村さーん!」 ヒマワリのような明るい笑顔で、両手をぶんぶん振りながら走ってくるのは藤田家のアイドル、ユリちゃんだ。 一面芝生の絨毯が広がるここは……公園だろうか? 上を向けば抜けるような青空に、綿菓子のような雲がぷかぷかと風にのって流れていて……ああ気持ちの良い天気だ。 「岡村さーん!」 楽しげなリズムで跳ねるように走るユリちゃんは、黒地に金ラメの線が入ったジャージ上下を着用中。 あれって社長も似たようなの着てなかったっけ? 深夜のコンビニ前でしゃがみ込む方々専用服みたいなヤツ。 18才の女の子の私服にしてはチョットどうなんだろう……あ、でも僕が知らないだけで若い子の間ではああいうのが流行ってるのかもしれないぞ。 どっちにしたって女の子の服装にアレコレいうのはいただけない。 黙っている事にしよう。 「岡村さーん!」 目測100m。 無邪気に走るユリちゃんと僕の距離は徐々に縮まっていく。 と、その時。 ユリちゃんは走りながらジャージの胸元のシッパーを少し下げるとおもむろに手を突っ込んだ。 で、次の瞬間。 ズザッと引き出したその手には、細長い……傘……?いや違うな、ステッキ……だろうか? ラブリーなピンクのステッキの先端には拳くらいのハート型の赤い石が付いていて、ダイヤモンドのようにカットされているから太陽の光に反射してキラキラと輝いている。 かわいいなぁ。 でもなんでステッキ? てか、ジャージの中にあんなの持ってたなんてびっくりだ。 にしても、どこかで見た事があるような雰囲気が……って、あれだ! アニメとかに出てくる魔法少女の皆さんの大半が所持してる魔法のステッキに似てるんだ! ユリちゃんってそういうのが好きなのかな?
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