第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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『あぁ……』と頭を抱える中沢さん。 残る3人、庄司さんと中島さん、それから伊藤さんも、おんなじように頭を抱えてこう言った。 『本当に……とんでもない間違いをしてしまった。あの人をシノハラだと思い込んで脅かしたんだ。ガラスを割ったり、足音をドンドンさせたり、首を絞める真似事まで……まさか無関係な人だったなんて……ああ……申し訳ない』 『目がなぁ……だんだんおかしくなってきて、視えるけど、球体みたいな歪んだ視界になっちゃって、もっとちゃんと確認すれば良かった……』 『私達……きっといい気になってたんだ。人違いとも気づかずにギャフンと言わすんだって息巻いてた……ひ、酷い事を……取り返しのつかない事をしてしまった……だから……だから……私達……成仏なんか出来ない、罰っせられるんだ……!』 ダバーーーーー! 5人は揃って涙を流し、何度も何度も謝罪の言葉を口にする。 ああ……そんなに泣いちゃって、そんなにあやまっちゃって……こんなの視たら放っとけないよ。 なんとかしたい、どうにか成仏させてあげたい。 だけど僕の霊力(ちから)じゃ無理なんだ。 丸投げなんてする気はないけど、でも……水渦(みうず)さんの霊力(ちから)無しでは成仏が叶わない。 ____今回岡村さんに如何なる事があったとしても、 ____私は一切助けません、 今朝から何度も言われ続けた、拒絶の言葉が頭の中でこだまする。 だけど……僕自身のスキル不足とお姫がココにいない今、頼れるのはこの人だけだ。 「……水渦(みうず)さん、お願いがあります」 彼女の両手を掴んだままの、この手に少し力を込めて僕は頭を下げたんだ。 「勝手は重々承知です、僕のスキルが足らない事も分かってます。だけど今回だけ、どうか助けてください。霊達(かれら)の為に、道を呼んでほしいんです」 辛辣な断り文句、少なくとも1ダースは食らうだろうと覚悟をしながら返事を待った。 たぶんこの後はため息をつく、そして薄っすら眉間にシワを寄せるはずだ。 「…………はぁぁぁ……、」 予想の通り、水渦(みうず)さんはため息をついた。 眉間にシワも寄せるはず……と、額を見たが少しもシワは寄ってない。 あれ……? と思うも、首を傾げるそれより先に、彼女は僕を見上げると、 「貴方、色々と厄介な人ですね。この現場では ”如何なる事があったとしても、決して貴方を助けません” と言ったのに、その私に頼るだなんて」 そう言って、再びため息をついた。 「はは……厄介でごめんなさい。”助けない” って散々言われたのに結局頼ってる、丸投げって言われても言い返せないや」 カッコ悪いなぁ、恥ずかしくて顔から火が出そうだよ。 それでも、お願いするしかないのだ。 今の僕に足りないスキル、これは明日から気合いを入れて身に付ける。 頼りっぱなしで終わりにはしないから、だからどうか霊達(かれら)の為に、僕の願いを聞いてほしい。
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