2367人が本棚に入れています
本棚に追加
強い願いを気持ちに込めて、水渦さんをジッと見ながら何か言うのを待っていた。
お互いに視線を合わせ無言の対話をしていたのが、先に目を逸らしたのは水渦さんの方だった。
そして彼女は深く息を吐きながら、
「はぁぁぁ……厄介なのはソコだけじゃないですけどね……、私が何を言ってもへこたれないのは、ある意味大したものですよ。鍵さん程ではありませんが、岡村さんと話していると調子が狂います……が、もう良いです、諦めて割り切ります。いつまでもこの現場ばかりに時間をかけてはいられませんからね。なので余計な話は抜きでいきます。霊達の件ですが、結論から言えば岡村さんの言う通り成仏するのがベスト。本来は言い出した貴方が道を呼ぶべきですが、スキル不足でそれが出来ない。となれば……私が呼ぶしかないでしょう」
こう言ってくれたのだ。
「ホ……ホントに……? 道……呼んでくれるの……? マジか……あ、あ、あ……ありがとーーー!!」
水渦さんがOKしてくれたっ!
それがあまりに嬉しくて、掴んだ両手をブンブン振って、お礼の言葉も1回じゃあ、僕の方が物足りなくて何度も何度も ”アリガト” を言ったんだ。
水渦さんは「やめてください」とか言ってるけれど、そこにトゲは感じない。
この人……辛辣だけど、わからず屋で皮肉屋で、おまけにおへそもよく曲がるけど、でも本当は、おなかのうんとその奥は、優しい人なのかもしれない。
「みなさん聞きました!? 良かったですね! 揃って成仏出来るんです! 水渦さんが【光の道】を呼んでくれるって!」
気持ちが上がってウッカリ声がデカくなる。
霊達は大いに戸惑いながら、『で、でも……』とか『悪い事したのに……』とか、肩を落として小さくなっていた。
ん……確かに、この霊達がした事は、篠原様にとって恐怖だったと思う。
でもさ、それは誤解をしたからで、それでも実際ケガをさせた訳じゃない。
食器もたくさん割ったけど、霊達はその場に落しただけ。
篠原様に投げた事はないのだ。
そういうの、ぜんぶ言った。
悪さをしたのは取り消せないけど、心からの謝罪をしたら、あとは前を向きませんか? と力説したのだ。
だがなにを言っても落ち込むばかりの5人組。
そんな霊達に、水渦さんが嬉々としながら話をしだして……
「そのくらいの悪さで凹んでいたら、私なぞペシャンコになりますよ。貴方方のした事は大した事ではありません。私なんて*********をした事がありますし、春には****で******でしたし、****で、**をして、挙句の果てには*********をしましたから。でも全然気にしてません」
『『『『『「き、気にしてよぉっ!」』』』』』
死者5人と生き人1人、見事なハモリをアゲインさせた。
ニィッと笑う水渦さんの、度を越したお転婆話にガクブルしたのは……言うまでもない。
最初のコメントを投稿しよう!