第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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強い願いを気持ちに込めて、水渦(みうず)さんをジッと見ながら何か言うのを待っていた。 お互いに視線を合わせ無言の対話をしていたのが、先に目を逸らしたのは水渦(みうず)さんの方だった。 そして彼女は深く息を吐きながら、 「はぁぁぁ……厄介なのはソコ(・・)だけじゃないですけどね……、私が何を言ってもへこたれないのは、ある意味大したものですよ。鍵さん程ではありませんが、岡村さんと話していると調子が狂います……が、もう良いです、諦めて割り切ります。いつまでもこの現場ばかりに時間をかけてはいられませんからね。なので余計な話は抜きでいきます。霊達(かれら)の件ですが、結論から言えば岡村さんの言う通り成仏するのがベスト。本来は言い出した貴方が道を呼ぶべきですが、スキル不足でそれが出来ない。となれば……私が呼ぶしかないでしょう」 こう言ってくれたのだ。 「ホ……ホントに……? 道……呼んでくれるの……? マジか……あ、あ、あ……ありがとーーー!!」 水渦(みうず)さんがOKしてくれたっ! それがあまりに嬉しくて、掴んだ両手をブンブン振って、お礼の言葉も1回じゃあ、僕の方が物足りなくて何度も何度も ”アリガト” を言ったんだ。 水渦(みうず)さんは「やめてください」とか言ってるけれど、そこにトゲは感じない。 この人……辛辣だけど、わからず屋で皮肉屋で、おまけにおへそもよく曲がるけど、でも本当は、おなかのうんとその奥は、優しい人なのかもしれない。 「みなさん聞きました!? 良かったですね! 揃って成仏出来るんです! 水渦(みうず)さんが【光の道】を呼んでくれるって!」 気持ちが上がってウッカリ声がデカくなる。 霊達(かれら)は大いに戸惑いながら、『で、でも……』とか『悪い事したのに……』とか、肩を落として小さくなっていた。 ん……確かに、この霊達(ひとたち)がした事は、篠原様にとって恐怖だったと思う。 でもさ、それは誤解をしたからで、それでも実際ケガをさせた訳じゃない。 食器もたくさん割ったけど、霊達(かれら)はその場に落しただけ。 篠原様に投げた事はないのだ。 そういうの、ぜんぶ言った。 悪さをしたのは取り消せないけど、心からの謝罪をしたら、あとは前を向きませんか? と力説したのだ。 だがなにを言っても落ち込むばかりの5人組。 そんな霊達(かれら)に、水渦(みうず)さんが嬉々としながら話をしだして…… 「そのくらいの悪さで凹んでいたら、私なぞペシャンコになりますよ。貴方方のした事は大した事ではありません。私なんて*********(ピーーーーーーーー)をした事がありますし、春には****(ピーーー)******(ピーーーーー)でしたし、****(ピーーー)で、**(ピー)をして、挙句の果てには*********(ピーーーーーーーー)をしましたから。でも全然気にしてません」 『『『『『「き、気にしてよぉっ!」』』』』』 死者(しびと)5人と生き人1人、見事なハモリをアゲインさせた。 ニィッと笑う水渦(みうず)さんの、度を越したお転婆話(・・・・・・・・・)にガクブルしたのは……言うまでもない。
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