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外はすっかり暗くなっていた。
時刻は夜の10時過ぎ。
僕達は広い庭の真ん中で、水渦さんが道を呼ぶのを待っていた。
外に出る前、霊達に聞いたのはこの3年間の事だ。
人が命を終えた時、善霊ならば【光の道】が迎えに来る。
その道にすぐには乗らず見送ったとして、その後の3年は定期的に迎えに来てくれるのだが、
『うん、しょっちゅう来てた。ピカピカ光って空から降りてくるの。道というか橋というか、とにかくドッヒャーってなるくらい大きいんだ。きっと道に乗って歩いて逝けば成仏出来るんだろうと思ってたけど……現世にいるのが楽しくて逝かなかったの。そうこうしてたら、ここ最近は来なくなっちゃってね』
手ぶり身振りの藤崎さんの話、これを聞いてホッとした。
定期便は【光の道】だったのだ。
それはすなわち、黄泉の国が彼らを善霊と判断している証拠。
大丈夫だとは思ってたけど、これでさ、道を呼んでさ、来たのが【闇の道】だったら目も当てられないじゃない。
ソワソワしながら固まる5人を待たせたまんま、僕は水渦さんの傍に行く。
ソワソワは僕もおんなじ。
だって、これから【光の道】がやって来るのだ。
道を呼ぶのはこれまでに2回視た事がある。
埼玉の廃病院では弥生さん、神奈川の黒十字様宅ではジャッキーさん。
呼び方は2人それぞれ違うものだった。
今回、水渦さんはどうやって呼ぶのだろう。
「あの、傍で視てて良いですか? 勉強させてください」
言いながら一歩前に、特に拒否する言葉もないからOKってコトだろう。
水渦さんは両手両五指、慣れた手付きで絡めだし、あっと言う間に何かを構築したのだが……これなんだ?
四角い……紙みたいに視えるんだけど。
説明もなにもない、淡々と作業を進めてる、今なにをしてるかサッパリ分からん。
僕は我慢が出来なくて、横から覗いて聞いてみたんだ。
「何を構築したんです?」
この質問に水渦さんは、
「便箋です」
とだけ答えると、続けて印を結びだし、お次はペンを構築させた。
「便箋とペン……誰かにお手紙を書くんですか?」
頭にハテナを量産させてそう聞くと、水渦さんはコクンと小さく頷いた、……え? マジでお手紙?
頭のハテナがさらに増え、僕がポカンとしていると、水渦さんはココでようやく説明をしてくれた。
「黄泉の国の【光道開通部】に手紙を書きます。現世から送り出したい死者がいる事、その死者の人数、性別、年齢、私の判断では善霊である事……などです」
へぇ……そうなんだ。
そゆの書くんだ。
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