第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

56/74
前へ
/2550ページ
次へ
薄っすら蒼く光る便箋。 それを宙に浮かせたまんま、同じく光るペンでもってサラサラと文章をしたためる。 これ……どうなってんの? 机の上とか何かの台とか、そういうのなんにも無しで書いてるよ。 でもって字、上手いなっ!(僕のヘロヘロな字と全然チガウ) 意外な特技を視たところで、まだ書き続けてる水渦(みうず)さんに声をかけた。 「いやぁ、【光の道】を呼ぶと言っても、霊媒師によって方法は様々なんですねぇ。僕はてっきり、水渦(みうず)さんも黄泉に向かって呼びかけるんだと思ってました。弥生さんもジャッキーさんも大きな声で呼びかけてたし」 なんて、感心しきりでそう言ったのだが……しまった。 弥生さんの名前を聞いて、水渦(みうず)さんは眉間にシワをめり込ませる程寄せちゃったよ。 まったく、相変わらず安定の仲悪さんだ。 「岡村さんの言う通り、道の呼び方は霊媒師によって様々です。志村さんは他の霊媒師とは事情が少し違いますが、声で呼びかけるという所は大倉さんと一緒です。うちの会社に限らず、余所の霊媒師も似たり寄ったりのようですね。ですが、私は違います」 「水渦(みうず)さんはこうしてお手紙を書く派なんですね。でもどうして? 何か特別な理由があるんですか? 僕なんか単純に、話しかけたほうが楽な気がしちゃうんですけど」 頭のハテナと好奇心に従っての質問だ。 「どうして、……ですか。私の理由も単純です。ただ単にヒトと話すのが嫌いだからです。死者だろうが生者だろうが、なるべく話したくありません」 おっふ、これまた何て答えたらいいか分からないヤツ。 ”ヒトと話したくない、なるほどですねー! じゃあお手紙なんてピッタリじゃないですか!” とかが無難だろうか? いや待て、やっとのコトで水渦(みうず)さんに道を呼んでもらえる事になったのだ。 ココで失敗したら、おへそカーブは間違いないから慎重にいくべきだ。 なもんで考えた末、 「あぁ、うん、なるほどね。うはははは」 と、多くは語らず曖昧に笑ってみた。 これが正解なのかは分からないけど、文章をしたためる手が止まらないから事なきを得たようだ。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2367人が本棚に入れています
本棚に追加