第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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「えっと……この子は……?」 聞きながら、そーっと指を出してみた。 凛とした鳥の子は、僕の指には興味を持たず華麗なまでにスルーする。 あ、そ、そっか、やっぱり猫とはチガウんだな。 大福やおはぎなら、指を出せばすぐにスンスン嗅いでくるし、さらにはあむあむ甘噛みもしてくれる。 鳥の子みんながそうなのか、それともこの子だけなのか。 どちらにしても、簡単にはなびかないという気高さを感じるよ。 むぅ……この感じ、どことなく水渦(みうず)さんに似ているような……と思っていたら、鳥の子は、いきなりンバッ! と片翼だけを広げると、そこに顔を突っ込んでカミカミカミカミ……くちばしで羽を整え始めたの。 その姿はすこぶる可愛く、すこぶる一生懸命で、でもってちょっぴりファニーな感じ。 やだ……ギャップ萌えしちゃうんだけど……! 「手紙はコレに届けてもらいます。伝書バトみたいなものですよ。書いた手紙を足に結わいて持たせるのです」 水渦(みうず)さんの説明に、僕は「へー!」とか「すごーい!」とか、語彙力ゼロの合いの手ばかりを入れていた。 や、チガウのよ、ちゃんと聞いてはいるんだけど、なんてったって僕は動物好きなのだ。 ゆえに、羽ばたく鳥が手紙を黄泉まで運んでくれる、このシチュエーションに上がりっぱなしなのだ。 聞けばこの子は水渦(みうず)さんの式神なのだそうだ。 主な仕事は黄泉の国へのお使いで、こうやって【光る道】を呼ぶ時や、口寄せをする時に召還するんだって。 「僕、水渦(みうず)さんの式神を初めて視ました。でも意外だったな、まさか鳥ちゃんだなんて」 ”ヒトと話すのが嫌い”、そう言い切っちゃう人だけど鳥は好きなんだ、と思っていたが。 「ああ、確かに今の式神は鳥ですが、コレを使うようになったのは最近です」 「そうなんですか? 前は違ったの?」 「違います。ヒト型の式神を数体使いましたが、どの式神も私とはやってられないと去っていきました」 「えぇ……マジで……? 式神って術者を守る者でしょう? その式神に嫌われるってナニしたのよ……」 「特別な嫌がらせをしたつもりはありません。い つ も 通 り に 接しただけです。なので、少し前まで黄泉に手紙を送る時は、霊力(ちから)で構築したクロスボウを使っていました。大きな霊矢に手紙をつけて、現世から撃つのです」 「えぇ!? クロスボウで手紙送ってたの!? あっぶな! それめっちゃ危なっ! 光道(こうどう)霊達(ひとたち)もいい迷惑だな! ダメだからね! それ絶対ダメだからね!」 「……それは先代にも言われました。クロスボウはもう使っちゃダメとも。それで……先代に叱られた時に言われたのです、」 ____黄泉の国には私からお詫びしておきます、 ____ああいうモノは危ないから、むやみに使っちゃダメなのよ、 ____反省するなら今回は許してあげる、 ____その代わり……明日からなにか動物を飼いなさい、 ____生き物と暮らしたら、きっと今より楽しくなりますよ、
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