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あ、いけね。
今のはちょっと言いすぎか? と心配したけど、意外にも、水渦さんは素直に聞いてくれたんだ。
「なるほど……そういうものなんですね……ふぅん、……そう言えば昔、姉と一緒に住んでいた頃、彼女も私に ”行ってらっしゃい” とか ”おかえり” とか ”おはよう” とか ”おやすみ” とか……ウルサイくらい言ってました」
あ……そうか。
この人、昔はお姉さんと一緒に住んでいたんだよな。
その時の事、思い出してほしいな。
「ん……良いお姉さんじゃないですか。水渦さん、そう言われて嬉しかったでしょう? 鳥の子もおんなじです。優しい言葉をかけてあげたら喜ぶに決まってる。……あ、そういや鳥の子に名前はないんですか? さっきから ”コレ” とか ”アレ” とか呼んでたけど、」
何の気なしに聞いてみた。
あんなに可愛い鳥の子だもの、どんな名前か知りたいし、もしもまさかの名前無しなら、今すぐにでもつけてほしい……と、それだけだったのに。
コッチがビックリしちゃうくらい、水渦さんがテンパった。
「な、名前ですか!? 言えません、秘密です! 絶対に教えません!」
「えぇ? なんで? 名前くらい良いじゃない。帰ってきたら、僕もあの子とお話したいし。なんて名前なの? 教えてよ。もしかして言えないくらいキラった名前なの? ”霊力” と書いて ”ミラクルパワー” とかそんなノリ?」
どう聞いても答えてくれない水渦さん。
”教えません!” の一点張りで逃げ回る。
僕はそんな彼女の背中を追いかけ、庭の中をグルグルグルグルしてたんだ。
すると後ろから。
浮かれたようなハイテンションの、声がビュンビュン飛んできて……
『お二人さん、ヒューヒューだね!』
『アッチッチでドキがムネムネしちゃうぅ!』
『エル・オー・ブイ・イー! ほの字ほの字ぃ!』
『冷やかしちゃってメンゴメンゴ!』
『もしかして我々、おじゃま虫?』
道待ちの幽霊5人は、異様な盛り上がりを視せていた。
それに対して水渦さんは「なにをバカな」とそっぽを向いて、僕も隣で「ちがいます」と言ったけど、幽霊達は退かなくて、さらに溢れる昭和ードに、結局みんなで大笑い(あ、水渦さんは小笑いね)。
……
…………
そんなこんなで時間が過ぎて、ふと気が付けば夜空に光が視えたんだ。
キラキラと金色に輝くそれは、真っすぐこちらに伸びてきて……
そう、霊達の為の【光の道】がやってきたのだ。
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