第七章 霊媒師休日

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なんて呑気に考えていると、サラサラの髪をなびかせた黒地に金ラメジャージのユリちゃんは、魔法ステッキを大きく振りかざし僕の目の前で足を止め、先程までのヒマワリのような笑顔から一変、黒バラのような美しくも冷たい表情に変わった。 そして母親である貴子さんより少し低い声でこう叫んだ。 「臨!兵!闘!者!皆!陣!列!在!前!」 えぇ!? ユリちゃんいきなりどうしたの!? 魔法少女御用達のファンシーなステッキを、臨!で横に切り、兵!で今度は縦に切る。 闘!で横に、者!で縦に、と、一文字一文字叫ぶごとに横と縦を交互にステッキで風を切っていた。 魔法少女の呪文にしては渋すぎる。 それって本格的な呪文の九字切りだよねぇ? 「臨!兵!闘!者!皆!陣!列!在!前! 我に降りかかる厄災を薙ぎ払い、我を守り我に勝利を!九字切り!そして変身っ!」 変身!の掛け声と共にビシッとステッキを僕に向ける、と同時にぼふんと煙幕が立ち上がりユリちゃんの姿は煙のなかに消えた。 ちょ……えぇ……!? 意味がわからないまま茫然と立ち尽くしていると、まだ濃い煙の中から聞き覚えのある爆音が響いた。 ギュイィィン!! やっ!! ちょっと!! この音は!! ギュン!ギュン!ギュン!ギュイィィィィン!!! 『っだらぁぁぁぁ!!岡村馬鹿野郎!!』 耳を劈く爆音、そして振動、そして怒鳴り声。 そして僕の目の前で十戒のごとく煙が割れた。
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