第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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…… ………… 『それじゃあ私達、そろそろ逝くね』 藤崎さんが明るい顔でそう言った。 「みなさん、お気をつけて。今夜は月も星も綺麗だから、素敵な道中になると思います。僕はまだ黄泉の国に逝った事はないけれど、すごく良い所だと聞いてます。だから心配する事は何一つありませんよ」 僕が笑ってそう言うと、 『そうか、それを聞いて安心したよ。ああ、それとパンとゼリーとお茶もごちそうさまね。すごくおいしかった。ありがとう、岡村さん』 あはは、大袈裟だなぁ。 でも嬉しいや、みんなで食べると美味しいよね。 しかし、まぁ……キラキラ光る道の前。 5人はニコニコ笑ってるけど、改めて視てみれば(うお)ったフェイスに驚かされる。 ぶっちゃけ、顔だけ視ると誰が誰だか分からなくって、だから僕は、着ている服で視分けてたんだ。 顔……黄泉に逝ったら元に戻るかなぁ? もしもダメならその時は…………大澤先生だ。 大丈夫、先生ならきっとなんとかしてくれる。 とは言っても、 『パンもゼリーもサンキューベリーマッチョ(・・・・)! なーんちゃってー!』←5人同時にマッスルポーズ。 あはは、本人達はぜんぜん気にしてなさそうだ。 …… ………… 『よし、乗るぞ……乗るぞ……(ソォォォ……)あぁっ! やっぱり緊張しちゃうー! 道なら何度も視てたけど、乗るのは初めてだもーん!』 きゃー! っとはしゃぐ5人組。 道に足を乗せかけて、クルッと振り向きドキドキしちゃうと平たい胸を押さえてる。 あーあー、これってもしや ”昭和のお約束” 的なものなのか? そゆの良いからさっさと道に乗らないと、そろそろウチのお嬢様が(水渦(みうず)さん)お怒りあそばすと思うのよ。 知らないと思うけど、この人キレたら厄介だから、僕の仕事が増えるから。 なんてハラハラしてたら案の定、 「ふざけてないでサッサと黄泉に逝ってください。貴方方が逝かないと、いつまでたっても私の仕事が終わりません」 アイター。 ほらね、言わんこっちゃない。 さすがに霊矢は撃たないだろうと思うけど、とにかく言葉がキツイんだ。 慣れないヒトは良い大人でも鼻水垂らして泣いちゃうくらい。 そんな中、 『メンゴメンゴ! もう逝くから怒らないで! せっかくの可愛い顔がもったいないよん!』 笑いながらゴキゲンで中島さんがそう言った、……直後。
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