第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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当然僕は、水渦(みうず)さんに説教されると思ってた。 道は呼べない、聞いた話は忘れちゃう、……こんなん、水渦(みうず)さんでなくたって、説教コースは確定だ。 それなのに、 「忘れてしまいましたか。まぁ、初めは仕方ないですよ、この仕事は思った以上に覚える事がありますから」 怒るでも呆れるでもなく、こう言ってくれたんだ。 正直……驚いた。 絶対にお説教だと予想したのに。 「…………あの、ありがとうございます。そう言ってもらえると救われます。だけどそれに甘えないよう、これからちゃんと覚えますからね」 うん、本当に覚えなくっちゃ。 いつまでも新人ではいられないのだ。 ソロの現場も増えるだろうし、いつかこの先、僕にも後輩が出来るかもしれない。 その時は、僕がみんなに助けてもらったみたいにさ、後輩を助けてあげたいじゃない。 「精々頑張ってください。今はまだ駆け出しで、得た知識は頭の中で点となり散らばっているのだと思います。これから更に知識が増えれば点同士が繋がるはずです。そうなればしめたもの。基礎知識が出来上がり、新たな知識も簡単には忘れません。なぜなら、基礎知識と関連付けて覚える事が出来るからです」 水渦(みうず)さんは淡々としながらも、すこぶる真面目に教えてくれた。 「関連付けて記憶する、……か。そうですよね。その方が頭に残りますよね。頑張ります。なるべく早く覚えて一人前になるんだ。それで、次に水渦(みうず)さんと組む時は、僕が道を呼びますからね、」 言った後、あ……って思った。 忘れてたけど(またかい)、水渦(みうず)さんは朝からずっと、僕と組むのは今日で最後と言ってたの。 あの言い方はガチだった。 それなのに、ワザとじゃないけど “次回” の話をしちゃった僕に…… 「言いましたね? それでは次回、私は絶対に道を呼びませんから。貴方1人で呼んでもらいます」 こう言ったんだ。 それって、次回もあるってコト……だよね? なんだろう、どういう風の吹き回し? 分からないけど、でもいいや。 余計なコトは言わないで、このままにしておこうっと。 …… ………… それにしても……水渦(みうず)さん、ゴキゲンだな。 チョー笑顔ー!  とはいかないけれど、でも分かるよ。 だって、だってさ。 夏の夜の湿った空気に溶け込んで、さっきから、ジャスミンの香りがしてるんだ。 (ここ)は外で、ティーセットもなんにもない。 それでも漂うこの香り。 これは水渦(みうず)さんの……感情の匂いだ。
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