第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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「ちょっと……なんで岡村さんが泣くんですか、」 水渦(みうず)さんはそう言って眉根を寄せた。 ああ……やっちまった……”泣きたくなった→結局泣いた”、このルートを辿った僕は、あろう事か今現在ガチ泣き中だ(でも嗚咽は漏らしてない)。 「や、スミマセン、……なんかね、水渦(みうず)さん見てたら泣けてきちゃって、」 男のクセに泣くなんて、とか思ってるかな? ……思ってるだろうなぁ。 とりあえず、急いで両目をゴシゴシ擦り水分を拭きとった。 涙はコレでOK、……だがしかし鼻水が垂れてきそう。 でもティッシュがないんだよな、どうしよう。 僕が鼻をズルズルしてると、水渦(みうず)さんがポケットティッシュを差し出した。 「え……使っていいの?」 「どうぞ。いつまでも鼻を啜られたら耳障りなので」 言葉キッツー! でも優しいな。 「チーーーン! はぁ……スッキリした。や、なんかすみません。いきなり泣いてビックリしちゃいましたよね」 丸めたティッシュをポケットに突っ込んでからお礼を言うと、 「驚いたのもありますが、何よりも引きました。なぜ岡村さんが泣くのか意味が分かりません」 ツンケンしながらこう答えたのだが、はは……ジャスミンの香り、一層強くなってるよ。 「……や、ほんとスミマセン。自分でも引きました。仕事中に、しかも女性の前で泣くなんて。あはは、笑ってやってください」 「…………別に笑うつもりはありません。そもそも、岡村さんが泣こうが喚こうが私には関係のない事ですから」 「関係ないって淋しいなぁ。同じ会社の霊媒師同士じゃないですか。もっとこう仲間意識を持ってですねぇ、」 「仲間意識? そんなモノ、私には必要ありません。たまたま同じ会社に勤めてるというだけで、仲間とかそういう意識はありません」 ツーンと言い切る水渦(みうず)さん。 あ、そう、ふーん。 そうですか、そゆコト言っちゃいますか。 ふーん、ふーん。 これは突っ込まざるを得ないな。
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