第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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「そうなの? じゃあ先代も? ジャッキーさんも? 水渦(みうず)さん、あの2人は好きでしょう?」 僕がこう斬り込むと、水渦(みうず)さんは ”ぐぬぬ” と一瞬言葉を飲んだ。 が、数瞬遅れでなんとか言葉を絞り出す。 「………………まぁ、好きというか、……なんと言いますか、キライではないです」 効いてる効いてる! それじゃあもう一斬りいきますか!(泣いたの見られて変なテンションになっている) 「ふぅん、そうなんだ。じゃあさ、なんであの2人はキライじゃないの? それって、上司だったり先輩だったり、同じ会社の仲間だからじゃないの?」 「………………少し前まで泣いてたクセに、随分と強気ですね。……特別な仲間意識はありませんが、志村さんは嫌いではないです。あの方は一度地獄を見ていますから。理由は違えど、私が日々味わうような侮蔑も嘲笑も受けた方です。かつて弱者であったが故に誰の事も下に見ない、容姿や言動で人を判断しない、信用に値します。惜しむらくは、配偶者に大倉さんを選んだ事でしょうか。マジョリカさんだけにしておけば良かったものを。ま、これは私がどうこう言う事ではありませんが」 むぅ……これ、”キライじゃない” のレベルを超えてるよ。 ジャッキーさんをめっちゃ信用してるし懐いてる。 でもって弥生さんがキライっていうのは……どうやっても変わらないんだな。 「ふぅん、そっかぁ。じゃあ先代は? なんで好きなの?」 「なぜ、ですか。愚問ですね。あの方を嫌う者なぞ、この世にもあの世にも存在しないと思います。あれだけの人格者にお目にかかった事がありません、……もしも、私の出生は変わらなくとも、過去の私が何かの奇跡で先代と出会い、育てられたとしたら……今の私とはまったく違う私が存在したのだと思います。残念な事に奇跡は起きませんでしたが、」 ふと目を伏せてそう言った水渦(みうず)さん。 ヤメテ、そゆ事言うのマジヤメテ。 また泣きそうになっちゃうから。
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