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諦めたような目、歪ませた口元。
水渦さんは自虐の笑顔を見せていた。
それがまた物悲しくて、鼻の奥が痛くなる。
「幼少期に先代と出会う____そんな奇跡は無かったけれど、今日会ったあの霊達は、……そうですね、中々面白かったです。が、きっとこれも、岡村さんが一緒だったからなのでしょうね。私一人では、こうはならなかったと思います。幽霊に食事を振舞うなんてコト、貴方しかしないでしょうから」
パンとゼリーの事を言ってるんだ。
あれは振舞うなんて大袈裟なものじゃない、ただ……、
「ゴハンはみんなで食べたら美味しいかなって、そう思っただけですよ。死者だから生者だから、そういうのは関係なくて、ただ単に僕が一緒に食べたかっただけ。それとね、僕がいなくたって同じだと思う。あの霊達なら水渦さんと仲良くなるんじゃないかな」
「そうでしょうか、私はそうは思いませんが。岡村さんがいなかったら、私はいつも通り、感情的になったでしょう。いくらあの霊達でも、負の感情をぶつけられれば態度は違ったものになったはず。…………まぁ、そんな事はどうでも良いのです。たまにはこういう現場も悪くないと……少し思っただけですから」
水渦さんの ”少し” はきっと少しなんかじゃない。
口で言ってるだけ、本当は ”すごく” が正解なんだろうな。
「ねぇ、水渦さん。今日の現場、気持ちが楽だったんだよね? 悪くないって思ったんだよね? じゃあさ、”たまに” なんて言わないで、これからもそういう現場にすれば良いじゃない。そりゃあ、相手がガチの悪霊だったらそうはいかないだろうけど、善霊の現場なら穏やかに送り出す事が出来るもの」
「簡単に言ってくれます。ですから、それは岡村さんが一緒にいたからです。私一人では場が凍るだけですよ」
あ……っと、語気が強くなった。
若干イライラしてるっぽい、……でももうちょっとだけ、あと少しだけ言わせてもらって良いかな。
「ううん、僕がいるとかいないとか、そんなのは些細な事だよ。藤崎さん達、水渦さんをすごく褒めてた。可愛いくて仕事が出来る優しい子だって。それと感謝もしてたよね」
____あなたは私達の為に【光の道】を呼んでくれたじゃない、
____そんなもの呼ばないで、
____この別荘から追い出してしまえば楽だったのに、
____そうはしなかったよね、
____一生懸命お手紙書いて、
____血判まで押してくれた、
「……それは仕方なくです。岡村さんが【光の道】を呼べないから、」
フィッと顔を横に向け、その反論はなんだかとっても中途半端なものだった。
まぁ、そうなるよね。
僕の願いを突っぱねて、道を呼ばずに追い出す事も滅する事も出来たんだ。
それをしなかったのは水渦さん。
彼女もそれを分かってるから、だから強く言えないの。
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