第二十三章 霊媒師 水渦の分岐点

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「そか……僕は4人目なのか。嬉しいなぁ、水渦(みうず)さんと関わろうとする人が4人もいるんだもの。僕と……それから先代かな? あとジャッキーさんもだよね。これで3人だ。あと1人は……ん、…………水渦(みうず)さんのお姉さま……ですか?」 何の気なしにそう聞いた。 僕はてっきり「そうですよ」なんて、ラフな返事がくるものだと思ってた。 なのにそうはならなくて、水渦(みうず)さんは一瞬、目を見開いて硬直した後、グシャッと顔を歪ませた。 唇を細かく震わせ、懸命になにかを堪え、目を真っ赤にさせている。 え……この人のこんな顔……初めて見たよ、 いつもの圧がない、いつもの皮肉さもない、とても、とても頼りない。 彼女は何度か口を開け、だけど中々言葉が出なくて、それでもなんとか絞り出し、震える口から震える声で言ったんだ。 「…………そうです、姉です。あの人が、一番最初に言ってくれました。関わると、家族になると。血の繋がりがなくても、……わ、私達は姉妹だから、……ず、ずっと……い、一緒にいると、こ、これから先、ど、どんな時でも、な、何があっても愛してると、……い、言ってくれました、嬉しかった、すごくすごく嬉しかった、も、もう独りじゃなくなるんだと、お、思った……それなのに、そ、それを、……それを…………私が………………壊しちゃった、」 悲痛しかない掠れた声。 言い終えて堪え切れなくなったのか、水渦(みうず)さんは声を殺して泣き出した。 そしてすぐ、立ったまま後ろを向いて、僕に顔を見せないようにしたんだよ。 その背中は丸まって、前に見た、圧を持って霊矢を放つ、あの力強さはどこを探しても見当たらない。 とその時。 バサバサバサ! 空の高い所から、翼を広げた黒い影が飛んできて、水渦(みうず)さんの震える肩に降り立った。 『キキキ、キキキ』 黒い影は鳥の子で、泣いてる主に寄り添うと小さな声でさえずり続ける。 水渦(みうず)さんは力無く片手を上げると、鳥の霊体(からだ)を一撫ぜし、「…………う、」と、聞き取れないけど何かを言った。 そんな様子を、僕は黙って見つめてた。 泣いてる女性に何を言ったら良いものか、それを思案してたんだ。 ”泣かないで”、”頑張って”、こう言えば良いのかな。 いや……チガウ。 この人にこれ以上、 ”泣くな” 、”頑張れ” と言うのは酷だろう。 これまでずっと、嫌になるほど頑張ってきた。 傷付いたその分だけ辛辣さが増していき、増せば増すほど人に嫌われ、あらゆる苦痛につぎはぎだらけの鎧(・・・・・・・・・)を着けて生きてきたのだ。
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