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「そか……僕は4人目なのか。嬉しいなぁ、水渦さんと関わろうとする人が4人もいるんだもの。僕と……それから先代かな? あとジャッキーさんもだよね。これで3人だ。あと1人は……ん、…………水渦さんのお姉さま……ですか?」
何の気なしにそう聞いた。
僕はてっきり「そうですよ」なんて、ラフな返事がくるものだと思ってた。
なのにそうはならなくて、水渦さんは一瞬、目を見開いて硬直した後、グシャッと顔を歪ませた。
唇を細かく震わせ、懸命になにかを堪え、目を真っ赤にさせている。
え……この人のこんな顔……初めて見たよ、
いつもの圧がない、いつもの皮肉さもない、とても、とても頼りない。
彼女は何度か口を開け、だけど中々言葉が出なくて、それでもなんとか絞り出し、震える口から震える声で言ったんだ。
「…………そうです、姉です。あの人が、一番最初に言ってくれました。関わると、家族になると。血の繋がりがなくても、……わ、私達は姉妹だから、……ず、ずっと……い、一緒にいると、こ、これから先、ど、どんな時でも、な、何があっても愛してると、……い、言ってくれました、嬉しかった、すごくすごく嬉しかった、も、もう独りじゃなくなるんだと、お、思った……それなのに、そ、それを、……それを…………私が………………壊しちゃった、」
悲痛しかない掠れた声。
言い終えて堪え切れなくなったのか、水渦さんは声を殺して泣き出した。
そしてすぐ、立ったまま後ろを向いて、僕に顔を見せないようにしたんだよ。
その背中は丸まって、前に見た、圧を持って霊矢を放つ、あの力強さはどこを探しても見当たらない。
とその時。
バサバサバサ!
空の高い所から、翼を広げた黒い影が飛んできて、水渦さんの震える肩に降り立った。
『キキキ、キキキ』
黒い影は鳥の子で、泣いてる主に寄り添うと小さな声でさえずり続ける。
水渦さんは力無く片手を上げると、鳥の霊体を一撫ぜし、「…………う、」と、聞き取れないけど何かを言った。
そんな様子を、僕は黙って見つめてた。
泣いてる女性に何を言ったら良いものか、それを思案してたんだ。
”泣かないで”、”頑張って”、こう言えば良いのかな。
いや……チガウ。
この人にこれ以上、 ”泣くな” 、”頑張れ” と言うのは酷だろう。
これまでずっと、嫌になるほど頑張ってきた。
傷付いたその分だけ辛辣さが増していき、増せば増すほど人に嫌われ、あらゆる苦痛につぎはぎだらけの鎧を着けて生きてきたのだ。
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