第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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10月初旬____秋。 夏が過ぎ、怒涛の繁忙期が終わった。 繁忙期……すごかったよ。 話には聞いていたけど、次から次へとひっきり無しに依頼が入り、マジで、ガチで、本気で、目の回る忙しさだった。 忙しい時、物の例えで ”猫の手も借りたいくらい” と言うけれど、僕の場合はそのものズバリで、途中、虹の国から戻ったお姫に ”猫又(・・)の手” を借りまくり、霊媒師(ひと)が足りなくソロにならざるを得ない現場も、どうにかこうにか終わらす事が出来たんだ(てか、大福いれば僕いらなくない?)。 大変だった。 でもさ、姫もいて、手探りながら頑張って、やっとのコトで夏が終わった翌月に、給料明細開いた時のあの衝撃はたぶん一生忘れない。 「な……なに!? この金額……! ま、間違えてない……!?」 見た事のない金額に(僕の基準だけど)、慌てて社長に電話した、……が、間違いでもなんでもなくて、繁忙期は通常月より ”現場手当” が多くつくから、正当な金額なのだと教えてくれた。 電話を切って夢心地。 何度も何度も明細を見た(主に総支給額)。 見れば見るほど気持ちが上がり、疲れのすべてが吹き飛んだ。 夏限定とはいえこんなに給料貰えるなんて……僕、霊媒師になって本当に良かった……! …… ………… とまあ、現金な理由だけども、俄然モチベが上がった僕は、張り切って現場入り……ではなく、交通費精算の為、会社に出社してるのだ。 時刻は8時20分、始業の10分前だ。 「おはようございまーす」 『うなー!』 お姫と一緒に事務所に入ると、社長とユリちゃんが迎えてくれた。 「モーニン」←天井に取り付けた鉄パイプで懸垂する社長。 「岡村さん、大福ちゃん、おはようございます」←ニコニコ笑うユリちゃん。 ユリちゃん今日も可愛いなぁ。 社長と並ぶと “美少女と野獣” だわ。 でもって……あれ?  1人足りないぞ。 「2人共オハヨゴザイマース! ねぇ、先代は?」 キョロキョロしながらそう聞くと、 「ジジィは今朝も駅に行ってるよ」 社長が笑ってそう言った。 「あー、なるほど。霊力(ちから)のある人を探しに行ったのか。先代いつも言ってますもんね。あと1人、新しい霊媒師がほしいって」 「ああ。俺も是非ともほしいと思ってる。今年の繁忙期、キツかったよな。依頼件数が年々増えてるのによ、霊媒師は俺入れて7人しかいねぇんだから」 「そうですよねぇ。でも霊力(ちから)持ちの人は中々いないから、見つけるのが大変ですよ。先代に頑張ってもらわないと」
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