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10月初旬____秋。
夏が過ぎ、怒涛の繁忙期が終わった。
繁忙期……すごかったよ。
話には聞いていたけど、次から次へとひっきり無しに依頼が入り、マジで、ガチで、本気で、目の回る忙しさだった。
忙しい時、物の例えで ”猫の手も借りたいくらい” と言うけれど、僕の場合はそのものズバリで、途中、虹の国から戻ったお姫に ”猫又の手” を借りまくり、霊媒師が足りなくソロにならざるを得ない現場も、どうにかこうにか終わらす事が出来たんだ(てか、大福いれば僕いらなくない?)。
大変だった。
でもさ、姫もいて、手探りながら頑張って、やっとのコトで夏が終わった翌月に、給料明細開いた時のあの衝撃はたぶん一生忘れない。
「な……なに!? この金額……! ま、間違えてない……!?」
見た事のない金額に(僕の基準だけど)、慌てて社長に電話した、……が、間違いでもなんでもなくて、繁忙期は通常月より ”現場手当” が多くつくから、正当な金額なのだと教えてくれた。
電話を切って夢心地。
何度も何度も明細を見た(主に総支給額)。
見れば見るほど気持ちが上がり、疲れのすべてが吹き飛んだ。
夏限定とはいえこんなに給料貰えるなんて……僕、霊媒師になって本当に良かった……!
……
…………
とまあ、現金な理由だけども、俄然モチベが上がった僕は、張り切って現場入り……ではなく、交通費精算の為、会社に出社してるのだ。
時刻は8時20分、始業の10分前だ。
「おはようございまーす」
『うなー!』
お姫と一緒に事務所に入ると、社長とユリちゃんが迎えてくれた。
「モーニン」←天井に取り付けた鉄パイプで懸垂する社長。
「岡村さん、大福ちゃん、おはようございます」←ニコニコ笑うユリちゃん。
ユリちゃん今日も可愛いなぁ。
社長と並ぶと “美少女と野獣” だわ。
でもって……あれ?
1人足りないぞ。
「2人共オハヨゴザイマース! ねぇ、先代は?」
キョロキョロしながらそう聞くと、
「ジジィは今朝も駅に行ってるよ」
社長が笑ってそう言った。
「あー、なるほど。霊力のある人を探しに行ったのか。先代いつも言ってますもんね。あと1人、新しい霊媒師がほしいって」
「ああ。俺も是非ともほしいと思ってる。今年の繁忙期、キツかったよな。依頼件数が年々増えてるのによ、霊媒師は俺入れて7人しかいねぇんだから」
「そうですよねぇ。でも霊力持ちの人は中々いないから、見つけるのが大変ですよ。先代に頑張ってもらわないと」
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