第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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◆ 時刻は15時過ぎ。 僕は今、3階の研修室にいる。 午前中は水渦(みうず)さん、(らん)さん、僕の順番で、ユリちゃんに交通費の精算をしてもらい、お昼はみんなで外にランチをしに行った(社長のオゴリ!) メンバーは先代も含んだ5人と1匹。 水渦(みうず)さんはやはりというか……それに着いては来なくって、会社で1人で食べていた。 お昼が終わって午後からは、僕と(らん)さんは行った現場の報告書を作成し、水渦(みうず)さんはすでに提出済なので(彼女は自宅で作成してくる)急な依頼に備え会社で待機する事となった。 4月入社のユリちゃんは、事務担当となってからちょうど半年になる。 今ではすっかり慣れたもので、仕事は早いわ正確だわ、おまけに癒してくれるから、”おくりび” の実力派アイドル兼ヒーラーみたいな存在だ。 そのヒーラーは幼い頃に苦労をした分、心優しく誰にでも公平で、だからみんなに愛される……そう、あの水渦(みうず)さんすら、ユリちゃんには強く当たらないのだ。 水渦(みうず)さんが嫌ってやまない社長の奥さんなのに、(らん)さんには怯えさすほど当たりが強いのに、わからず屋なのに、皮肉屋なのに、おへそカーブなのに、……って、言い過ぎか? とにかく、これってスゴイ事だよ。 報告書をやっつけて、みんなでおしゃべりしてた時、失せ物探しで現場に出ていたキーマンさんから電話があった。 なんでも、依頼者のご近所さんちで頻繁に幽霊が出るらしく、ついでに寄って除霊をしてほしいと追加注文が入ったというのだ。 キーマンさんは失せ物探しはレベル神ではあるけれど、なんてったって霊の姿が視えないもんで除霊はからきし出来ない。 そこで誰かヘルプがほしいと連絡が来て、“それだったら ボクが行く!” と(らん)さんが手を上げた。 そんなこんなで(らん)さんを送り出し、精算も報告書も終わった僕は…… 「印の練習に付き合ってください」 そう言って水渦(みうず)さんを研修室に連れ出したのだ。 …… ………… 3階の研修室で水渦(みうず)さんと2人きり。 印の練習ももちろんしたい。 だけどその前に、話がしたいなぁって。 Y県の現場、水渦(みうず)さんとのツーマンセル。 あの日以来だ、こうして会うのは。 その間、繁忙期の忙しさに流されて、なんにも話をしていない。 元気でした? とか、 忙しかった? とか、 それから……、お姉さまを探す為の打ち合わせとか、そういうのなんにもだ。 だから今日は話がしたいんだ。
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