第七章 霊媒師休日

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キャァァァァァァァァァァァァ…… 「ァァァァァァァァ!!!!」 長い長い自分の悲鳴で目が覚めた。 汗ぐっしょりの重い身体はすぐに動かす事ができなかった。 汗が目に入ったのかヒリヒリと染みる。 僕は力なく目を擦り、そのまま手の甲で首の汗を拭った。 見慣れた天井、見慣れたテーブル、大丈夫、ここは間違いなく僕の部屋、住んで4年のワンルームアパートだ。 遮光ではないカーテンから春の陽射しが入り込む。 僕はベットの上でなんとか上半身を起こすと枕元のリモコンでテレビをつけた。 朝の情報番組ではお天気お姉さんが「今日は1日快晴です!」と笑っていた。 「夢……だったんだ……ヨカッターーー!!」 怖かった……お父さんの悪鬼っぷりがホラーすぎで泣くかと思ったよ。 ユリちゃんは出来る限り守ります。 だから迷わず成仏してください、とりあえず合掌。 「なんだ、まだ7時前なのか」 僕はテレビ画面のはしっこに表示されてる時間を見て笑ってしまった。 本当はもっとゆっくり朝寝坊する予定だったのに、こんなに汗かいたら気持ち悪くて二度寝は無理だ。 仕方ない、起きるとするか。 そうだ、せっかく早起きしたんだ、起きてシャワーを浴びたら洗濯して掃除して、気分転換に散歩に行こう。 だって今日と明日は休みだもの! 研修中は土日休みって言われてたけど、田所さんの現場ではなんだかんだと土日も家に帰れなかった。 その代休で月火はゆっくり休める事になったんだ! 怒涛のような一週間を乗り切ったご褒美に、散歩がてらベベに行こう。 ネットで見た春の期間限定、桜のケーキとカモミールティーを頼むんだ! 願わくば散歩の途中でかわいい()に逢えるといいなぁ。 そしたら写真いっぱい撮って、あわよくばちょっとモフモフさせてもらうんだ。 「なんか盛り上がってきたぞー!」 猫とケーキで頭が一杯になった僕は、鼻歌を歌いながらシャワーを浴びた。 まさか今日という日に運命の出逢いが待っているだなんて、この時は夢にも思っていなかったのだ……。
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