第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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「……いえ、さすがにそうは思いませんが……岡村さん、平気で私と一緒にいるからイライラもしないのかと……」 「ちょ、どんだけポジティブなの、んな訳あるか。わからず屋で皮肉屋で、おへそカーブもしょっちゅうなのに。何かって言うとすぐに僕を突き放すんだ。しかもキッツイ言葉で」 ジト目で見ながらぶっちゃけてみた。 たまには良いだろ。 それにさ、この人に上辺だけの ”大丈夫ですよ” を言ったところで見抜かれる。 洞察力があるからね、ウソをついてもバレるんだ。 これを聞いた水渦(みうず)さんは「……ません、」と蚊の鳴くような小声で言った。 前半が聞こえなかったが、でもたぶん、”すみません” と言ったんじゃないのかな(ぜんぜん違ったらカッコ悪いけど)。 ハーブティーとクッキー効果か、水渦(みうず)さんに圧がない。 ポカンとしたりショボンとしたり、なんだかまるで、ごくごく普通の女の子みたい。 いつもこうなら良いのにな、いつもこうしてたら良いのに。 「本当、アナタは言葉がキツイんだ。でもね、もう慣れた。だから別に一緒にいるの嫌じゃないよ。それと、前に話したっけ? 僕、前職はクレームメインのコールセンターにいたんだ。毎日毎日、貴重なご意見ご要望を(・・・・・・・・・・)謹聴してさ……ああ……いろんな方がいらしたなぁ……胃の痛い日が多かった……あの頃を思い出せば…………あはは、ダイジョウブ、水渦(みうず)さんの毒舌なんてカワイイもんだ」 完全に敬語も忘れ、自分で言って自分で笑って、ハーブティーを一口飲んだ。 水渦(みうず)さんは、こんな僕をポカンと見ながらクッキーに手を伸ばす。 そして、 「……岡村さんはやっぱり変わってます。…………もう、慣れたんですか。ふぅん、そうですか、……ふぅん、」 小さな声で独り言ち、クッキーを自分からパクリと食べてくれたんだ。 …… ………… 空気は悪くない。 流れも悪くない。 これなら切り出してもダイジョブか……? 「ねぇ、水渦(みうず)さん。印の練習は後にして、先に話がしたいんだ。……覚えてる? 夏に僕が言った事。水渦(みうず)さんのお姉さまを探そうって、それで会いに行こうって言ったじゃない。それでね、僕は今日これから、一緒に探したいと思ってるんだ」
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