2370人が本棚に入れています
本棚に追加
ボタ、ボタ……ボタ、
堪え切れなくなったのか、目から涙が落下した。
水渦さんは、真っ赤な目をして僕を見る。
泣き顔を隠す余裕もないようで、震える声でこう言った。
「……岡村さんが……姉を探す……?」
「うん、そうだよ。僕が探す。アナタはなんにもしなくていい。クッキーでも食べながら僕の隣にいたらいい」
水渦さんの頭を撫ぜて、僕はニコッと笑ってみせた。
僕が笑ったくらいでは、彼女の不安はなくならない。
分かってる、でも……でもさ、無いよりはマシだろう?
こんなに泣いて……ずっと不安で怖かったんだ。
泣き止んでほしい、笑ってほしい。
その為には____
「水渦さん、お姉さまの写真を持っている? 出来ればそれを見せてほしいんだ」
僕が言うと彼女はコクンと頷いて、スマホをそのまま差し出した。
”ありがとう” 、声をかけて画面を見ると……そこには、一人の女性の笑顔があった。
優しそうな人だな……色白で頬に赤みがさしていて、笑った顔が人懐こい。
これは水渦さんが撮ったのかな。
お姉さまはこちらに向かって片手を伸ばし……まるで、手を繋ごうとしてるみたいだ。
画像はあまりキレイじゃないから、お姉さまと一緒にいた頃、当時のデータを移し持っているのだろう。
この人が……水渦さんのお姉さま……か、
孤独と後悔、闇の中で膝を抱えて泣いている、……水渦さんを救える唯一の人だ。
たっぷり数分。
画面を見つめて笑顔を頭に叩き込む。
今はこれだけ、余計な情報は必要ない。
この笑顔、差し出された優しい手、これだけあれば充分だ。
「じゃあ、ちょっと探してくる、」
水渦さんにそれだけ言って、椅子に深く座り直して鼻から大きく息を吸う。
それを口からゆっくり吐いて、向かい合わせた両手両五指、記憶の通りに絡めてく。
最初のコメントを投稿しよう!