第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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◆ 慌ただしく会社を後に。 僕と水渦(みうず)さん……それと、ユリちゃんと事務所で仲良く遊んでた、お姫も一緒に駅に向かって歩き出す。 この時間、街は人が溢れていた。 会社が終わり家に帰る人、これから飲みに行く人、食事に行く人、デートをする人……どこを向いても人ばっかりだ。 雑踏の中の水渦(みうず)さんは、俯きながらも器用に人を避けていた。 僕は途中、肩に飛び乗るお姫を撫ぜて、それから彼女にこう言ったんだ。 「先にどこかで食事をしない?」 「食事……ですか、……申し訳ありません。今は私……食欲がなくて食べられそうにありません。それで……岡村さん、……姉の居場所なんですけど……分かったのでしょうか……? 急に私に有給を取れだなんて……つまりそれは、」 水渦(みうず)さんはモゴモゴと、不安な顔で、か細い声で、僕を見上げて聞いてきた。 そうだよね、気になるよね。 ごめんね、これだけは先に言えば良かったよ。 「うん、お姉さまが今どこで何をしてるか、ぜんぶ分かったよ」 言った答えに彼女の足は一瞬止まり、途端、通行人にぶつかった。 「ほら、危ない」 咄嗟に手を取りこちらに寄せると、普段の強気はどこへ行ったか、「……ません」と小さくあやまり俯いた。 まるで迷子の子供だな……頼りなくて不安気で、オドオドさえしてるんだ。 でも……無理もないか。 お姉さまの居所が分かった、そう言われたら動揺するのは然りだもの。 しかしどうするか。 ちゃんとゴハンを食べさせたいけど、今の様子じゃとてもじゃないけど食事は無理だ、……どうしよう…………ん……ん…………まぁ、いいか。 一食くらい抜いたところで死ぬ事はないだろう。 ダイジョウブ、クッキーも持ってるし、どこに行ってもコンビニあるし。 それにさ、いざとなったらさ、お姉さまがきっとなんとかしてくれる(・・・・・・・・・・・・)。 「よし、食事は後だ。アナタの食欲が戻ってから、その時一緒に食べればいいよ。じゃあ行こう、お姉さまの所へ。T市(ココ)から電車で1時間もあれば行けるから」 水渦(みうず)さんの手を引っ張って、駅に向かって歩き出す。 隣では ”今から!?”、”ちょっと待って!”、 ”心の準備!” とウルサイけれど、「聞こえませーん!」と応戦しながら構わず歩く。 大丈夫、僕も一緒に行くからさ。 ダイジョウブ、だいじょうぶ、……そう言えば、前に送った昭和のみんなは、こんな時、こう言うんじゃないのかな。 「水渦(みうず)さん、落ち着いて。ダイジョウV(ブイ)! ダイジョウV(ブイ)だから!」 ってね。
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